まずは「紛失」１からどうぞ。
「やっぱりダメだったよ、データ。
しょうがないから機種変更だけしてきた」
俺はそう言って、新しい携帯を沙知絵に見せた。
「また電話番号やアドレス、一から入れなきゃだ。
参ったなぁ、バックアップを取っとけば――」
「あるわよ」
沙知絵が俺の話を遮った。
そのまま彼女は席を立ち、パソコンの置いてある部屋へと入ってゆく。
「はい、これ」
そう言って沙知絵が手渡してきたのは、USBメモリーだった。
「バックアップ。取っといたから」
「え？ いつのまに？」
「あたしの携帯のバックアップを取った時。ついでにね」
沙知絵はいつもと何も変わらぬ調子でさらりと言う。
俺は掌にちょこんと載るメモリーをじっと見つめた。
☆ ☆ ☆
新しい携帯と一緒に、USBメモリーをショップに持っていくと、データは完全に復旧した。
大きな声では言えないが、シークレット設定にしておいた分もだ。
あいつ、データを移す時に見てないよな。これ。
暗証番号を、娘の栞の誕生日にしていたので、少し不安になる。
まぁ、大丈夫だろう。沙知絵はそんなに鋭いタイプではない。
電話帳をざっと見たあと、写真のデータをチェックする。
こちらのシークレット設定の分は、女たちと二人で写している写真や、
ホテルでハメ撮りした写真。 そう、俺の大事なコレクションだ。
え？
そんな……バカな……
写真の中の、女の顔や身体が、ぐしゃぐしゃと、荒々しく塗りつぶされていた。
真っ黒に。
膨大な量の写真、その全てがだ。
冷たい汗がひとすじ。背中を流れ落ちる。
顔から血の気が引いていくのが自分でも分かる。
もちろん、俺が自らこんなことをする筈はない。
画像をパソコンで加工する方法すら知らない。
俺は思考停止に陥る。
女たちとは数日間、連絡が取れなかったので、とりあえず電話をかけてみる。
繋がらない。
友里も、瞳も、沙理奈もだ。
何故だ？
☆ ☆ ☆
家へ帰ると、沙知絵は夕飯の支度をしていた。
娘の栞がリビングのソファの上で膝を抱え込み、テレビをみている。
「栞、ただいま」
「あ、パパ。おかえりなさい」
「もう宿題は済んだのかい？ ママに手伝ってもらってたんだろ？」
「えーそんなのとっくの前だよ、だって夏休みの宿題だもん。もう提出しちゃったし」
「ん？ おとといママ、新聞切り抜いてたぞ」
「知らなーい、そんなの」
栞はプイと横を向き、テレビのアニメに視線を戻した。
俺はキッチンの方を振り返る。
包丁で何かを叩いているのか、沙知絵の背中は小刻みに揺れている。
「はー、終わっちゃった」
アニメが終わったようで、栞がソファの上で伸びをする。
テレビの画面はニュースに切り変わっていた。
女性キャスターの眉間に皺が寄り、急に深刻そうな顔つきになる。
――また独身女性が狙われました。
ここ数日、都内では、一人暮らしの女性が殺害される事件が続いています――
「栞。テレビを消しなさい。
もう晩ごはんよ、ほら、支度を手伝って」
キッチンから、沙知絵の尖った声が飛んできた。
「はーい」
栞は渋々といった様子でテレビを消す。
ソファにひとり取り残された俺は、ローテーブルの上の夕刊を手に取った。
一面からぱらぱらと捲ってゆくと、社会面の記事が切り取られている。
紙面の上部に視線を移し、日付を確認する。
今日の新聞だ。
沙知絵のやつ……、いったい、何をしてるんだ？
ポケットを探る。新しい携帯を取り出す。
家の中では当然サイレントモードにしている。
サブディスプレイを確認するが、まだコールバックはない。
「あなた、出来たわよ」
急いで携帯をポケットに戻した。
俺は顔を上げる。
テーブルの向こうで、
沙知絵は優しげな微笑みを浮かべていた。
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機会音痴も、度が過ぎると後でエライ目に遭いますよね。
私ですか？ 大丈夫ですよ。
携帯を持たない人間なんで。www
そして旦那さん。大事なデータはＳＤに入れて他の場所へ保管しておきなさい。決して見つからないように。
女性は男に浮気されると、浮気相手の女性に憎しみが向かうことが多いようですねえ。
料理が不気味です。。まさか……
新聞の切り抜きに、そこまでの秘密があったとは。
クールな嫁が、さらに怖いですね。
ところで私も携帯データをPCに転送するケーブルを買ったんですけど、
夫が使ってくれないんですよ・・・。
もうね、どんだけあったかい画像がでてくんのかとね、ティッシュ持って待ち構えてました。だから、バナナの皮を踏んだくらいズッコケました。
これ、通しで読むと面白いわ。前編後編にするといいと思う。だって主人公が、なにげいい人に書かれてる。「合コン」は何かワケがあるんじゃないかと思ったもの。
また、連載、お願いします。
そんなものいつまでも携帯に残しておいたら。
妻というのは案外色んなチェック入れてますからね。
かくいう私も主人の携帯の怪しげな女名前の電話番号やアドレスはちょっとずつ変えちゃいましたから
vをuとかｂをｄとかにね(爆)
お姉ちゃん画像も削除しておきました。
機会音痴の主人はひたすら不思議そうな顔をして携帯を眺めていましたけどね。
女ってしたたかですから。
沙知絵さん、がんばれ〜♪
いくら変えても私を怒ることはできないでしょ(~m~)
こんばんは。
いつもありがとうございます＾＾
そうそう、機械オンチは大変ですよー。
えー、ほんとに携帯不携帯なんですか？？
羨ましい。僕も持たんとこっかな(笑)
鯨さん＞
こんばんは。
いつもおおきにですー☆
女はねぇ、男の携帯を見ますよ。
見なさそうな子でも見てる。
気をつけなきゃですねぇ＾＾;
銀河系一朗さん＞
こんばんは。
いつもありがとうございます☆
＞女性は男に浮気されると、浮気相手の女性に憎しみが向かう
これってありますよね(笑)
なんなんだろう。
え？ まさかそんな結末……
iaさん＞
こんばんは。
いつもありがとね＾＾
クールポコ？？？
お笑いっすか？
ググってみましたが……
女の子って激情的なタイプより、
クールなタイプの方が怖いですよね＾＾;
は。旦那さまの携帯も一度……
つるさん＞
こんばんは。いつもおおきにです〜☆
あらら、期待を裏切ってしまいましたね＾＾;
たしかにコンパのシーンはちょっと浮いてるなぁ。
書いてて楽しかったですけどね、あそこだけは。
個人的には３０点くらいのデキですわコレ。
書き込み不足＆あまりに荒唐無稽すぎるので(笑)
またイイネタがあれば続きモノ書きますね＾＾
舞さん＞
こんばんは、いつもおおきに！
そうですよねー、携帯に残してちゃダメだ(笑)
アドレス一文字変更すげー！
スパイなみのテクですやん( ´艸｀)
おそろしや〜〜
おっくれってるー！
・・・私がマニアックなの？
ウィキペディアには載ってましたよ。
男は黙って、土下座！
（クールポコ風に言ってみました＾＾；）
あ、でも、この場合はどちらが悪いんでしょうね。
……どっちもどっちでしょうか（＾_＾；）
妻が調理したものは……なんて、
ぼくもおぞましい光景を想像してしまったんですが、
考えすぎですかね？
おおおおお、遅れてるのか！ 俺！
orz
またYOUTUBEで探して見てみます！☆
Shitsumaさん＞
うう、元ネタが分からんです……(笑)
やっぱり事件の発端は旦那の浮気なので＾＾;
料理の内容まではまったく考えてなかったですわー。
そうか、そこまで書く手があったか。
レイバックさん、またやっちゃったのかと初めは思いつつ、一気に読んじゃいました。
やっぱり私も、最後のお料理の内容が気になりました。
ハンバーグじゃなければと、祈るばかりです・・・。
クールポコは東京出身だから、あまり関西では知られてないかもね。でも、
ヤっちまったなあ！？
こんばんは。
なにぃー？ やっちまったなぁ！
早速チェックさせて頂きましたよ(笑)
なんとも微妙な間が面白いっすね( ´艸｀)
私、携帯は計三度水没させております……
は、ハンバーグ！？ それ怖ぇえええええ！
つるさん＞
ええ。リアルでもいじられ上手ですよ僕は(笑)
どれくらいの認知度なんだろうね？
いやはや今回は勉強になりました＾＾
膨大な写真？
どんな諜報活動ｏｒ情報収集をしていたんだ？
スパイ工作員として、データを黒塗りに…とは
失格だな
ま、１８禁ということで、墨塗り・ぼかし は当然かな
〜いつまでも おこちゃま だなぁ