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「シンクロニシティ」前編


年寄り扱いしないでくれっ。

大きな声で、そう言い残し、白髪の男性は隣の車両へ消えた。

席を譲ろうとして同時に立ち上がった僕と見ず知らずの女の子は、

車内の視線を、それこそ根こそぎ集める。

二人して目を伏せ、もじもじと座りなおした。

「あんな言い方しなくても……」

「ねぇ」

僕の口から、ついこぼれた愚痴に、隣の彼女も同意する。

苦笑いを共有することで、やり場のない気まずさが、少しだけ薄まったような気がした。

「素直に譲ってもらえばいいのにね。ああいう時は」

「うん。わたしたちはまだいいよ。別にこれで席を譲ることをやめちゃったりしないし。

お兄さんもそういうタイプでしょ。本質的に優しい人。顔を見たら分かる――」

そうかな? 僕は考えもしなかったことを言われて、自分の頬をつるりと撫でる。

「――でも、もしね、まだ純粋な小学生が勇気を出して、どうぞって、

立ち上がったときにあんな断り方されたら、傷付いちゃって、

もうそのまま一生席を譲らない人間になる可能性だってあるわけじゃない? 

そう考えると、あのおじさんの罪は大きいよ」

彼女は眉をひそめ、さきほどの男性に厳しいジャッジを下した。

マスカラで強調された長い睫毛が瞬き、風が吹く。ほのかに甘い香りが僕の元へ届く。

香水だろうか。それともシャンプーの匂いだろうか。僕には判別できない。

「そう思わない?」

「え? ああ、その可能性はあるね。

僕でも今、軽くショックだったもの。あの言い方はない」

「そうだよ。断るにしても、すぐに降りますので――とか言い方があると思うんだ」

周りの乗客の興味は、既に各々の携帯電話や文庫本、DSなどに分散していた。

僕らはそれでも、ほんの少し顔を寄せ、小声で話した。

初対面にも拘わらず、互いにいきなり、くだけた口調だった。

それが不快に感じられない。

敬語でないのに、まったく違和感がないのは何故だろう。

車内にアナウンスが流れる。最寄の駅が近付いてきた。

「あ、降りなきゃ」

彼女は茶色の革のトートバッグを持ち直し、慌てて立ち上がる。

ほぼ同時に、僕も席を立っていた。

彼女はきょとんとした顔つきで、隣の僕を見上げる。

「僕もこの駅なんだ」

「そうなの? ご近所さんだね」

彼女は改札機に携帯をかざし、僕は定期券を挿入する。

二人並んで改札を抜ける。

駅前のコンビニを通り過ぎたところで彼女が立ち止まった。

「わたし、こっちなんだ」

「そう。僕はまっすぐだ。じゃあ、気をつけて」

「ありがとう、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

僕は闇に溶け込んでゆく後姿をしばし見送った。

それが、彼女との再会だった。










 後編へつづく




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この記事へのコメント
連載だ〜♪
「シンクロニシティ」っていいテーマですね。
意味深なラストだし。どうなるのかな?
楽しみです。
(今日のコメはボケなしで 笑)

Posted by ia. at 2008年11月25日 01:53
>つづく
チョー楽しみなんですけど。
タイトルが、車内の何気な会話を違うものにみせています。しかも初対面にも拘わらずくだけた会話だったのに、ラストの一行が気を持たせてる。つい何があるんだろうって続きが読みたくなります。
人の連載って面白い。書いてる人は全体像が見えてるから、わからないかもしれないけど、読むほうは先入観0だから、これから何が起きるかワクワクします。もしかしたらホラーかもしれない、ヒーローものかもしれない。ドキドキ。
Posted by つる at 2008年11月25日 23:48
再会!?
気になります!
後編出てから読もうと思ってたのに持ちきれず読んじゃいましたw
Posted by ポン at 2008年11月26日 08:34
わわわっ!気になります。
久しぶりの連載ですね。
楽しみにしてます!
Posted by naena at 2008年11月27日 12:31
iaさん>
こんばんは。
やっと後半書けたよ(笑)
遅くなって申し訳ないっす。
おっと、タイトルはあんまり気にしないでねー^^;

つるさん>
こんばんは。
最近なかなか腰を据えて書けなかったからねぇ。
いつもよりは少し長めのお話になりました。つっても前後編だけど(笑)
そうそう小説って後出しジャンケンだからね。
だからこそ読者を唸らせなければならないのだが……

ポンさん>
こんばんは。
気になるでしょう?(笑)
やらしいラスト一行ですよね^^;
後ほど後編UPしますね☆

naenaさん>
こんばんは。
ありがとうございます!
つっても次で終わりなんですけどね^^;
いつもよりは読み応えあるかな???
お楽しみに☆
Posted by レイバック at 2008年11月27日 23:22

 私は70才だ 世間では 不動産王 と私のことを呼んでいるが

 私は 親の財産 を相続しただけの 無能な「ドラ息子」なんだ

 そんな私を、バカなアメリカ人の大衆どもが、いつの間にか

 よってたかって(私の意思に関係なく) 大統領 という、

 はっきり言って めんどくさーい そして やりたくねー 立場・職務に

 祭り上げやがった

  じょーだん は マイケル・ジョーダン くらいにして欲しい

 なんで、オレ様 トランプゲーマー が 大統領なんか やらなきゃいけないんだ

 ワケわからん ただ、オレは遊び半分で 大統領選挙 とかに出て

 テケトーに言いたい放題、めちゃくちゃを言いまくっただけなんだ

 それを ダ・メリカ人のバカ女を始めとして、

 のんびり マクドナルドを食べていたかった オレ様を トランプ タワーの
 
 レジデント:住人 から トランプ・レジデントに しやがった

  あり得ない… 信じられない 言っておくが オレには何もできない

 わかっているんだろーな  本当に何もできないからな

 これから、どーしたらいいんだろう オレは”白い家”で途方にくれた
Posted by マクドナルド トランプ・レジデント at 2016年11月15日 17:18
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