「なかなか仕事ってみつかんないもんだな」
俺がひとり言のように愚痴ってみると。
「まー不景気だしねー」
香織は姿見の前で、舞いながら返事をする。
どうやら。友人の誘いで始めたフラメンコとやらにハマっているらしい。
俺はちゃぶ台に片肘をついて缶ビールを呷った。
「だからさー。ロールプレイングゲームみたいに、
もっと簡単に転職できたらいいんだよな」
「何それ。いわゆるひとつのジョブチェンジ?」
「そうそれ。で、なんで長嶋?」
俺の突っ込みを、香織は華麗にスルーする。
「じゃあマァくんのジョブチェンジ歴はー、
会社員→リストラ→パチプロ→派遣社員って感じだね、ハハハハ」
「……。リストラってジョブなの?」
それにハハハって笑ったよコイツ。ハハハって……。
「やーだ。まだ傷付いてるんだ? いい加減忘れなよ」
フン。
俺はまたグビリ。
香織の舞はじょじょに激しさを増す。
掃除はおろそかな俺の部屋。
当然、捲き上げるほこりもハンパない。
嗚呼。俺のおつまみ。モロキュウ哀愁。
「まぁ引きずってる訳でもないけどさ。あれは痛恨の一撃だったんだよ」
「まーそうだよね。で、ジョブチェンジできたら何になるのよ? 戦士? それとも賢者?」
「そりゃーまーやっぱし――、
遊び人だろ」
「死ねよ」
「いてっ。バカ、グーはよせ、グーは」
「あたしだったらねー、今OLでしょ、その次はお嫁さん→お母さん。でも、最終的には舞踏家かな」
香織は、照明を抱くかのように両手を天井に広げ、うっとりと目を閉じる。
「武闘家ね。キミならすぐになれそうだよね。うんうん」
それ、フラメンコっつうより太極拳だもんね。
なんて。
間違っても言えない。
香織は涼しい顔で再び舞い始めた。
「ねー、明日ハロワ行くの?」
「どうすっかなー」
「まぁたまには、ゆっくりしてもいいんじゃん? 新しいドラクエ買ったんでしょ?」
「だね。買ったね」
なにげない一言で俺はホロリとくる。
優しいとこあんだよな。こいつ。
少々、暴力的だけど。
そろそろ香織もジョブチェンジさせてやらないと。俺はそう心に誓う。
おし。とりあえず明日はハロワだ。
勿論。
DSとドラクエは持ってかない方向で。
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「リストラってジョブなの?」
ささやかなツッコミに笑っちゃったよー(^^
最後の決意が勇者のように凛々しい!
でも一生尻に敷かれるんだろうなぁ(笑)
ご無沙汰してしまいました〜>。<
レイバックさんらしい1話だな〜って思いました。
軽妙に進む会話。。一見いい加減そうに見える主人公がほろっとさせてくれるあたりが、
レイバックさんだ〜って
あったかい気持ちになりました☆
気心の知れた人との会話はいいですね。似たような会話でも他の人とするものと全然違います。そういうのを感じました。
>そろそろ香織もジョブチェンジさせてやらないと。
まー。主人公のマァくんは良い人。逆に、主人公にそう思わせてしまうあたり、香織はなかなか小悪魔の要素があるわ。
フラメンコ、ホコリ、すごいですよね。酒場のかぶりつきで見たことありますけど、むせましたし。
でもなんだかこの人ならやっていけそう☆
やる気は連れそう相手によって出るもんですよね〜♪
こんばんは。
いつものパターンですよねぇ^^;
まぁ定番モノがあってもいいでしょう。
などと自己弁護してみる(笑)
ドラクエとかFFやらない人には分かりにくかったかなー。
らに〜たさん>
こんばんは。お久しぶりですー^^
やっぱりこういうのが一番書きやすい流れですね。
いい加減男は作者そのものだしー(笑)
つるさん>
こんばんは。
会話文ってさ。難しいよね。
やっぱり自分の話し方を引きずっちゃうからさ、
全然違うキャラ同士の会話とか書けないやオレ(笑)
フラメンコはねぇ。音楽がいいよね。
なんか情熱的な感じがしてさ♪
ポンさん>
こんばんは。
ほんとにねぇ景気の悪い話ばっかりですもんね。
TVとか見てるとこっちまで暗くなっちまいますよ^^;
せめて明るいお話を書いていきたいですね☆
どーも、ヒモ・ストーリーに実感が有り過ぎる
というか経験者じゃないと書けないストーリーというか
体験者は語る みたいな…
レイバック 改め ひもバック とすべし!
DS? ドラクエ? そんなん持ってハローワークに行くバカが
どこにいるんだ!?
相手にされねーぞ? ハロワじゃない ローワーク:底辺の仕事 に
まわされちまうぞ?