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「六月の鯨」6


(まずは、「六月の鯨」1 からどうぞ)




 堤防に備えられた三段ばかりの階段を越え、二軒の海の家に挟まれた細い通路を駆け抜ける。

 視界が開けた途端、強い日差しが佑太の頭上に降り注いだ。

 佑太に先駆け、砂浜に突進していったミノルは、波打ち際数メートル手前で立ち尽くしている。

 その姿に釣られたように佑太の足もスピードを緩めた。

 大きなリュックの背中へ向け、砂浜を一歩一歩踏み締めるように歩いてゆくと、ミノルが腑抜けたような顔つきで振り返った。

「あれ? ねぇ佑ちゃん、俺たち何しに来たんだっけ?」

「……バカ」

 佑太は、ねぇねぇとうるさいミノルを相手にせず、辺りを見回した。

 左右数百メートルに亘って広がるオフシーズンの砂浜は閑散としている。

 波打ち際、はるか彼方に、犬を散歩させている人の姿がぽつり、かろうじて見えた。

「あっ!」

 ミノルが突然素っ頓狂な声を上げた。

 佑太はミノルの指先を目で追い、肩越しに振り返った。

 片膝を立て、堤防に座り込んでいる一つの影。

「アキラー!」

 ミノルがばかでかい声を上げる。

 それが合図だったかのように、アキラは堤防から砂浜に、ひょいっと飛び降りた。

 自信満々な顔つきで、悠々と佑太たちのもとへ歩いてくる。

「おまえら遅ぇぞ」

 アキラは細いあごを持ち上げ、眩しそうに眉をしかめたあと、にやりと笑った。

 伸びたTシャツの襟元は汗で色濃く染まり、額から流れる幾筋もの汗が陽光をきらりと反射していた。

「俺の勝ちだな」 アキラは言った。

「なんだよ、先に着いてたのかよ」 佑太は舌打ちをした。

「ああ、ついさっきだけどな。タッチの差だったな」

「いやー、無事で良かったよ。俺たち心配してたんだぜー。ね、佑ちゃん」

 ミノルが腰に手を当て、妙に偉そうな口調で言う。

「お前、完全に忘れてただろ、アキラのこと。海だー! わーい! とか言って子供みたいにはしゃいでたの誰だよ」

 佑太はミノルをからかうように言ってやる。

「ちょっ、そんなことないないないない、嘘だよ、アキラ」

 ミノルは慌てふためいて手をぶんぶんと顔の前で振る。

「ああ、堤防から見てた」 アキラがニッと白い歯を見せる。

「あらあら、ミノルちゃんってば、転ばないかしらー。って心配してたんだよ。俺も」

「こら! アキラ!」 

 ミノルは赤くなった頬を膨らませ、やーいやーいと尻を打っては逃げ回るアキラを、転がるように追いかけている。

「へいへーい」

「待てーっ」

 やれやれ。

 佑太は放り投げられたミノルのリュックを拾い上げると、海の家の前に捨て置かれた青色のベンチに、どかりと腰を下ろした。

「おい、佑太、こっち来てみろ! すげーぞ」

 佑太が顔を上げると、さっきまで追いかけっこしていたアキラとミノルが肩を並べ、波打ち際でしゃがみ込んでいる。 

「なんだよー」
 
 佑太は座ったまま大声で尋ねた。

「いいから、こっち来いって!」

「ちぇっ」

 重い腰を上げた佑太は、しゃがんだままもぞもぞとしている二人の元へ、ゆっくりと向かった。















  「六月の鯨」完結編 へつづく


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この記事へのコメント
おっかえり〜!
アキラもレイバックさんも無事でホッとしました(笑)

最近コマーシャライザーというのが流行ってるみたいですよ。
レイバックさんも遊ぼー♪
Posted by ia. at 2009年09月21日 01:40
よかった〜。続き、ずっと待ってましたよ。
それにしても、アキラの脚力、すごい!
Posted by naena at 2009年09月21日 20:02
待ってました。
着いてみれば、アキラが一番乗りか!
教師を振り切った武勇談も気になりますね。


Posted by 銀河系一朗 at 2009年09月22日 22:38
iaさん>
こんばんは。ただいまです。
いやーよく寝たって感じですわ(笑)
コマーシャライザー、ちょろっと見ましたけど面白そうですね。
僕も宣伝しちゃおうかなー( ´艸`)

naenaさん>
こんばんは。
お待たせいたしました(笑)
いやー、過去最長のブランクでしたねぇ。
再開早々に読みに来て頂けて嬉しいです(´ー`)
アキラはスポーツ万能ですからねぇw

銀河系一郎さん>
こんばんは。
お待たせしてスミマセン。
おっと、そのあたりはなんも考えてなかったですわ(笑)
ラストがやっと見えてきましたよ〜。
Posted by レイバック at 2009年09月23日 23:20
ロンバケかい!
代わりに、続きを考えてました。3人の少年は、解体した鯨肉を無料配布している列に並ぶのよ。あ、ちがったみたい。

今日のシーンはいいなあ。子供たちの追いかけっこ、砂浜の熱が足裏に伝わってくる気がします。

え、やる?コマーシャライザー。わ〜どの作品かなあ。楽しみ。
Posted by つる at 2009年09月24日 01:06
もしかして、もう更新されないんじゃと思ったこともありましたが・・・
杞憂に終わって、よかったです(^-^;)

無事に3人、海に辿り着いて、
いよいよラストに近づいてきたのでしょうか?
2人が騒いでいるということは、クジラが見つかったんですかね。
続き待ってます(^-^)
Posted by shitsuma at 2009年09月24日 23:45
つるさん>
こんばんはー。
いやーほんとよく休ませていただきました(笑)
お。
鯨の解体シーン&無料配布ね、それいただき( ´艸`)
子供を描くのは楽しいもんですね。でも難しいですわ。
でもさー。コマーシャライザーって面白いけど普及するのかなぁ?

shitsumaさん>
こんばんは。
やっぱり……^^;
そう思われてるだろうなーなんて思いつつ無気力状態でなんも書けませんでした(笑)
そうですね。やっとこさラストが見えてまいりましたよ!
目の前には競技場が!!!
待て次号!
Posted by レイバック at 2009年09月26日 01:11
必殺の(?)逆読みをしています

六月の鯨6⇒5⇒4…1というように 何で?ですか
いゃ、けっこう連作モノの”逆読み”で、なんとなく話がつながってしまう…
ということに気付いたんですよ

で、この「六月の鯨」
逆読みも、けっこうイケますね☆
何か「面白いですよ?」

ちなみに アキラ を アラーキーとカン違い:汗

では、次の「六月の鯨5」へ
Posted by IWC委員 at 2016年10月29日 18:16
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