妻はママ友たちとの昼食会に出かけている。必然的に私が娘を見ることになる。
べったりと張りついているのも何なので、書斎で書きものをしながら見ることにする。
見るというよりは、目の届くところで勝手に遊ばせておく、といったほうが正確かもしれない。
子守りはあまり得意ではないが、きっと彼女のお気に入りの動物のおもちゃたちが、良い仕事をしてくれるだろう。
娘は色とりどりの声色を器用に使い分けながらままごと遊びをしている。
キリンが母親役で、ゾウが父親役、子供役はどうやらワニのようだ。
複雑な家族構成に思わず苦笑いしてしまう。
菜食主義の両親に、肉大好きの男の子。
これではキリンのママさんも毎日の献立が大変だぞ。などと要らぬことを考える。
こんやはハンバーグですよー。
脳天気な声がして、椅子からすべり落ちそうになる。
そこはふつうにハンバーグで良いのか。考えすぎだな、私は。
集中して一気に第一稿を書き上げた。
結びの句点を打ち終えて、ぐいっと伸びをする。
一段落ついた空気を読み取ったのか、娘が話しかけてくる。
ねえねえ、ぱぱの本にはしっぽがあるね。
しっぽ? いったい何のことかと思い、振り返る。
娘は本棚から抜き出した本を、ぱたぱたと開いたり閉じたりしている。
どうやらしっぽとは、しおり紐のことらしい。
たしかに彼女の絵本には、ほとんどしっぽがついていない。
しっぽ、しっぽ、かわいいね。
娘は本のしっぽで遊びはじめる。
本はあきらめ顔でされるがままになっている。
原稿の手直しをするうちに、いつしか声はやんでいた。
遊び疲れたのだろう。娘はうつらうつらと舟をこいでいる。
そろそろ昼寝の時間だ。
娘を抱き上げる。
意外にずしりときて、重くなったなあ、と感心する。
この春、彼女は幼稚園に入園する。
きみも、もう少しでしっぽつきの本が読めるようになるね。
私はおだやかな寝顔に語りかける。
寝室へ行くと、窓からこぼれる春の日差しが、ベッドにひだまりを作っていた。
ショートショート:目次へ
夕食がハンバーグなのも可愛い(^^
一応は「もしカレーだとベタベタしてゾウさんやキリンさんが食べにくいから」と考えてるんでしょうね。
それにしても、この「しっぽ」発言は心憎いですね。
本を読むたび思い出しそうです。
余談ですけど、たまに色の違う2本の「しっぽ」がついてる本があって、なぜだか得した気分になりますよね。
こんばんは。
小さい子供の遊び方って見てると面白いですよね。
姪っ子がかわいい盛りなので、今のうちによーく観察して、ネタにさせてもらおうと思ってます(笑)
しおりひもってないとほんと不便なんですよね。
文庫だとないものも多いし。たしか新潮文庫には必ず付いてるのかな。
挟むものがなにもなくてティッシュ挟んだりとかよくしてますw
これもよーく観察した賜物ですか。
パパの目線はこんなツッコミをしているのかーと
なんだか新鮮でした。
読みながら自分の小さいときはどうだっただろうって
思い出し・・・思い・・・思い出せへん!
昔すぎて記憶が彼方〜。
しおりはお気に入りの皮細工のがあったんですが
ウチのニャンズに盗られて、どこかへいってしまいました。
こんばんは。
ありがとうございます。
観察してるつもりがいつのまにか翻弄されてたりw
僕も小さい頃の記憶ってあまりないんですよね。
小説書きとしては残念なところです。。
そういえばねこがしおりひもを噛んじゃって……
っていう画像を先日ネットでみましたよ。
めっちゃかわいかったー。
意味が今一つ、わからない部分があるんですよ 全体的に、ほんわかした作風の文章ですが…
>娘はうつらうつらと舟をこいでいる そろそろ昼寝の時間だ
”うつらうつらと舟をこいでいる”⇒これは何の描写でしょうか?
それと今回の「しっぽ」はオチが、、、あるよーな、ないよーな…微妙な 考え過ぎなのか?
例:
寝室へ行くと、窓からこぼれる春の日差しが、ベッドにひだまりを作っていた
ベッドの上では、”しっぽ”たちが丸くなって、娘を待っていた
みんな、娘のお気に入りの大好きな”しっぽ”たちだ ”しっぽ”たちは、
娘の周りを囲むように丸くなった 娘は”しっぽ”たちにとって同じく
「娘」なのかもしれない
上みたいな結びは、どうでしょうか?