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「冷えたグラス」


ああ、風呂気持ち良かった〜。
ふうぅ〜〜。

おーい、ビール冷えてるかな?
お。入ってる入ってる。

グラスも忘れてないか?
グラスが冷えてなきゃ台無しなんだぞー。

『もう! 忘れてませんよ! あなたはホント一度忘れただけで、
鬼の首でも取ったかのように、いつまでも同じ事を言うんだから』

よいしょっと。

トクトクトクトク
グビッ

ぷはぁ。

……

おい、どうしたんだお前?
今日はやけに静かじゃないか。

うん? そう今日も大変だったんだよ。
まったく毎日毎日参るよなぁ。

おい、どうした?
そんなに冷たい頬をして。

私は写真立ての中で微笑む陽子の頬に、そっと手を触れた。
冷えたガラスの感触が、指先を通して心に突き刺さる。
私の言葉に優しく相槌を打ってくれた彼女はもういない。

今日も散らかったダイニングに響くのは、
ただ私の独り言のみだった。












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