おすすめ作品

  「JP」 「糸電話」 「逆向き」 「締め切り」

  ショートショート全作品目次へ


「冷えたグラス」


ああ、風呂気持ち良かった〜。
ふうぅ〜〜。

おーい、ビール冷えてるかな?
お。入ってる入ってる。

グラスも忘れてないか?
グラスが冷えてなきゃ台無しなんだぞー。

『もう! 忘れてませんよ! あなたはホント一度忘れただけで、
鬼の首でも取ったかのように、いつまでも同じ事を言うんだから』

よいしょっと。

トクトクトクトク
グビッ

ぷはぁ。

……

おい、どうしたんだお前?
今日はやけに静かじゃないか。

うん? そう今日も大変だったんだよ。
まったく毎日毎日参るよなぁ。

おい、どうした?
そんなに冷たい頬をして。

私は写真立ての中で微笑む陽子の頬に、そっと手を触れた。
冷えたガラスの感触が、指先を通して心に突き刺さる。
私の言葉に優しく相槌を打ってくれた彼女はもういない。

今日も散らかったダイニングに響くのは、
ただ私の独り言のみだった。












ショートショート:目次へ


 


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。