私ね、一ヶ月ほど前に人差し指を突き指したの。ヒビでも入ってると怖いから、一応診てもらおうと思ってね。○×病院に行ったんだけど。あそこの整形の先生は本当イケメンよねぇ。診察室に入ってビックリしたわよ。ウエーブのかかった長めの髪に、透き通ったこげ茶色の瞳。鼻筋も通ってて、思わず見入ってしまうほど綺麗な顔立ちでしょ? それにね。部屋の入り口で固まってる私に「どうぞ」って言う声がまた渋くていいの。そのくせ「骨は大丈夫ですよ、突き指ですね」なんて言いながら私に向けた笑顔ときたら、少年のように無邪気なんだから。クールな外見とのギャップが最高よぉ〜。あれはきっとモテるだろうなぁ。女はギャップに弱いもんね? ね? でも私なんか相手にしてくれるかな。まったく自信はないんだけど、実は、一つだけ秘策があるの。私、ダメ元で頑張ってみる!
☆ ☆ ☆
女友達と電話で話した翌日、私は早速、例の整形外科を訪れた。
「○○さんどうぞ〜」
私の番だわ。胸の鼓動が高鳴る。
コートを右手に持ち、診察室へと入った。
緊張しながら先生の前のイスに腰掛ける。
「こんにちは。今日はどうされました? 指はもう大丈夫ですか?」
覚えてくれてる。それだけで胸が締め付けられそうになった。
「先生、実は私、捻挫しちゃったみたいなんです」
彼は心配そうに眉をひそめ、
「捻挫? そりゃ災難でしたね。つい先日も突き指したばかりなのに。
では患部を見せてもらいましょうか。手首ですか? 足首ですか?」
「いえ……、実は……
乳首なんですっ!」
私は思い切ってセーターをまくり上げ、Fカップの胸をあらわにした。
カラダには自信があったのだ。
「ああ。そうですかー、いやぁ、多いんですよね」
「ええっ!?」
私は自分の耳を疑った。
「いやぁ、多いんですよ乳首の捻挫」
「はぁっ??」
私が混乱して回転イスの上で固まっていると、
彼は、面倒臭そうに続けて言った。
「なんだか、僕が診察の時だけ多いみたいなんですよ、乳首の捻挫。
今月に入ってから、あなたで9人目ですね、ハハハ」
ハハハじゃねーよ、ハハハじゃ。私の胸のやりどころはどーすんだよ。
彼は両手で私の乳首を優しく触診すると、
「大丈夫ですよ、骨には異常ありませんから」
骨はねーんだよ!
開いた口が塞がらなかった。
「実は僕、先日結婚しましてね。
その彼女が最初に乳首の捻挫で来診した患者さんだったんですよ。
いやいや何がきっかけになるか分かりませんねぇ」
私の胸の前を、冷たい風が吹き去った。
「さぁ、胸をしまって頂いて結構ですよ。
お薬出しときましょうね、痛み止め一週間分。これは心の分です」
……。
私は無言で診察室を後にした。
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ショートショート、大好きです。
素敵な先生ですね(笑)
心のお薬出すところが、チャーミングですね☆
でプッ!
私は反応するツボが少し人と違うみたいで。
みんな考えることは同じということですね。
ご訪問ありがとうございます^^
かなりすっとぼけた先生ですよねー(笑)
不意打ちが返り討ちにあったような感じですよね(笑) 心の痛み止めもあると良いのになぁ^^
シモネタ拾って頂いてありがとうございます^^
僕もニヤニヤしながら書いてますからね、
かなりキモい光景です(笑)
こういう場って、真面目と冗談の紙一重ですもんね・・・。
全然そんな必要ないのに「上全部脱いでください」って言ったエロ爺の医者を思い出しましたヽ(`Д´)ノ
あんにゃろお(ノ ゜Д゜)ノ ==== ┻━━┻
バカな会話文ですよねぇ(笑)
マジっすか?
エロ爺!許せませんな!
(ノ`A´)ノ ⌒┫