あと10分ぐらいだろうか。
そろそろ日本史の授業も終わろうかと言うタイミングで、
カネゴンこと金田先生が、水色のファイルケースから紙の束を取り出した。
「それじゃ今から中間テストの結果を返すぞー。
名前を呼ばれたもんから、前に取りに来るようにー」
「うえぇ〜〜〜」
教室中からうんざりだぜ、とばかりに不満の声が上がったが、
まったく意に介さず、カネゴンは答案をバラまきだした。
「相田〜、今井〜、江原〜 」
名前を呼ばれた者が次々と席を立ち、
答案を受け取っては、OHジーザス! 風に天を仰いだり、
ため息と共に両肩を落としたり、様々なリアクションを見せている。
そして再び席に着く頃には、多くの者が、
答案の右上の角、点数が書かれた部分を手前に折り曲げ、
人から見られないように固くガードしていた。
そんなに恥ずかしいなら、
一夜漬けでもいいから勉強すりゃいいのに。
テストが返される度に、心の中でついつい毒づいてしまう。
涼子だって点数に自信があったわけではないが、
わざわざ答案用紙を折り曲げて隠そうとは思わない。
「〜、沢田〜、杉〜」
呼ばれた自分の名前に我に返り、席を立った。
ワイシャツの袖口から覗く腕毛が暑苦しい、
男性ホルモンのカタマリのようなカネゴンの手から、答案を受け取る。
69点。
うーん。
微妙な点数だなぁ。
喜ぶにはちょっと足りないだろうし、悲しむほどでもない。
69、69、69、69、69。
涼子は席に戻り、隠すでもなく、その字面を眺めている内に、
昨日、健治の部屋で、彼と肌を重ねた時の感触を思い出していた。
すると、不思議なことに、身体の中心部に、じーんと痺れるような火照りが感じられる。
バカ。
涼子は授業中にそんな気分になっている自分を恥ずかしく思い、
透き通るように白くツルリとした頬を、薄いピンク色に染めた。
「おい、杉、ムッツリだなぁ」
「ええっ!?」
突然、甘い回想を打ち破ったガラガラ声に驚き、涼子は後を振り返った。
斜め後の席に座っている後藤だ。
こいつはまったくデリカシーのないゴリラ以下の男子だった。
まさか、このゴリラにわたしの心を読まれたの?
「な、なによ!?」
「なんだよ焦って。 次、物理だろ? って訊いてんの」
「あ……そうよ、物理よ。 べ、別に焦ってなんかないわよ」
「なんだよ、お前赤くなってんじゃん、オレに惚れたか〜?」
イッヒッヒと下品に笑うゴリラの相手はそれぐらいにして、返事をスルー。
涼子はクルリと前に向き直った。
もう一度、答案の“69”という数字を見つめ、
細く伸びた指で、そっとそこに触れる。
なぜだろう? 目をつぶると指先に、
ほのかに熱を感じるような気がした。
キーンコーンカーンコーン。
終業のチャイムが鳴る。
涼子は、健治の温もりを大事にしまうように、
答案の角を優しく折り曲げた。
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エロかわいくて素敵なストーリーだと思いました♪
ね!ついつい意識しますよね(笑)
妄想が膨らみまくって、
変な話を書いてしまいました^^;
面白いコンセプトのブログですね〜。
小説とか、綺麗に書けるなんですごいです(・∀・;)
コメントありがとうございます^^
なかなか思い通りには書けませんが、
なんとか気合で更新しています(笑)
またよろしければ覗いてやってくださいね、
よろしくお願いします。
でも牛スジとモツ煮込みは勝てると思います。
僕も生涯回数少ないですよ(笑)
牛スジとモツ煮込みですか??^^;