はぁードキドキするなぁ。
彼女の事を考えるだけで胸が高鳴る。
駅の改札を通り抜けたカズヤは、歩きながら携帯に保存している画像を見る。
いったい今日何度目だろう。
液晶画面の中からカズヤに上目遣いで微笑んでいるのは、
出会い系サイトで知り合ったユミちゃん。
3日前に、初めて写メ送って貰ったんだけど。
かわいいんだよなぁ。
とても30歳には見えないもん。
カズヤの頬がひとりでに緩む。
だが、深夜に彼女から送られてくるメールの中身は、たしかに大人の女性のものだった。
若い子だとなかなか、あそこまで直接的な表現はしないだろう。
「昔からよく名器だって言われるんだ♪
カズノコ天井とか、ミミズ千匹とか^^
でも男の人って、よくそんな言葉考えつくよね(笑)」
だって!
バカ、今は外だぞ、落ち着けオレ。
カズヤは自分を叱りつける。
でも興奮するのも仕方がない。
そのユミちゃんと、今日やっと会えるのだから。
この1ヶ月間メールのやりとりだけで、よく頑張ったものだ。
いつもはダラっとした服装ばかりのカズヤだったが、
今日はパリっとしたストライプシャツを着て、好印象を与えようと目論んでいた。
やっぱり第一印象が肝心だ。
おっと、あぶね。
携帯ばかり見ていると、あやうく通行人にぶつかりそうになった。
ちっ。と舌打ちが飛んでくる。
はぁーやだやだ。愛が無いヤツって。
カズヤは携帯をパンツのポケットに仕舞い、待ち合わせの場所へ向け、足を速めた。
多くの人で賑わう駅の建物を出ると、
10年ほど前に建てられた商業ビルが、どーんと視界に入ってくる。
今日は、そのビルの中にあるカフェで待ち合わせだ。
右手につけた腕時計を見る。おそらく5分前には着くだろう。
カズヤはホッと一息ついて、建物の2階部分へ繋がるエスカレーターに乗った。
ステップの左側に寄って立ち止まり、薄汚れた赤い手すりを掴む。
会ったらまず、改めて自己紹介するだろ。
それから、えーと、メールで盛り上がったエヴァの話をしてー……
それから、えーと、えーと……
カズヤはまるで上の空だった。
エスカレーターが2階に着くことに、まったく気付いていなかった。
ステップの奥に置かれたカズヤの左の足先は、
段差の部分に開いた10pほどの亀裂――
(なにか金属製の物が当たって出来たのだろう)に、
すっぽりと嵌っているのに。
カズヤが、自らのつま先を襲った痛みに気づいた時には既に手遅れだった。
旧いながらも10年間、来る日も来る日も実直に人々を運んできた機械は、
カズヤの左足程度の抵抗で、自らの仕事を投げ出さない。
キリキリ、ゴリゴリと部品をきしませながら、
ウォォォォンと唸りをあげ、ゆっくりとカズヤの身体を飲み込んでゆく。
不運な事に、その時エスカレーターに乗っているのは、カズヤ一人だけだった。
「ごあっ! 誰かっ! 誰かっ!? 助け、ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」
男の口から出たとは思えない金切り声に気付いた人々が、
続々とエスカレーターの周りに集まってくる。
だがその時にはもう、カズヤの肉体は、この世に存在しなかった。
エスカレーターの降り口の縁にはポツンと携帯電話が転がり、
ただカタカタと、空しい音を辺りに響かせているだけである。
――数秒後。
乗り場付近で、何事かとざわめく群集の足元で、突然何かがうごめいた。
地面からせり上がってくるステップと共に、
数百匹、いや数千匹のミミズが押し出されてくる。
まるで、パスタマシンのような要領で。
機械は黙々とそいつらを押し出してくる。
血まみれのそいつらを。
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エグい話でしたね。
意表をつかれました。
ナイスです。
ウキウキした感じの文章から一転、
淡々とした文章に変わるところが良いですね。
そんなにグロくないですよ。
乙一さんみたいです。
タイトルもある意味エグいんですけどね(笑)
気持ち悪いお話でスミマセン^^;
こわかったですか??^^
不快感を覚える人が居たら・・
と考えて、注釈を入れましたが、
つまんないので削除してみました(笑)
乙一氏ってそんな感じなんですね、
まだ読んだ事がないので
一度試してみます♪
オススメを読みに来ました♪
わ〜すごかった〜
いつもオチを見逃すわたしも、
わかりましたです。
ホラーだ〜(ホラーも好き☆)
こんばんは。
いつもありがとうございます♪
これはウキウキしてるヤツを
突き落とす感じの話ですよね(笑)
ホラーは好きだけど書くのは
難しいですわー^^;