昨晩、大学時代の後輩から電話があり、
今日、新町駅前のスターバックスで会うことになった。
電話では詳しく話さなかったが、何やら相談があるという。
仕事を終え、待ち合わせ時間の15分ほど前に店に着いた俺は、
メニューを見て、本日のコーヒーを頼んだ。
これが一番安い。
しかも100円でお代わりができる。
意外に知られていない利点。
「ホットとアイスがありますが」
地味な顔の女性店員が地味な声で訊き返した。
ホットに決まってるじゃないか。
外では雪がチラついてるんだぜ。
危うく声に出してそう言いかけたが、
理性が口にブレーキをかけてくれた。
「ホットでお願いします」
俺がにこやかにそう言うと彼女は分かりましたと笑顔を返した。
『キミ笑うとかわいいね。普段は地味――』
おっと。危ない。これは全文削除だ。
どうも俺は一言多いようだ。
なみなみとコーヒーが注がれたカップを受け取った。
今日はミルクは入れないでおこう。
砂糖も必要ない。
BGMにチェットベイカーの甘い歌声が流れていた。
店の奥に目をやった。ラッキーな事にシングルソファの席が空いている。
俺は壁際の方の席に深く腰掛け、鞄から取り出した文庫本を開いた。
コントのような掛け合いばかりで、
まるで事件を解決しない探偵コンビにイラつきながら
しばらくの間ページを捲っていると、頭上に声がかけられた。
「先輩」
俺は文庫本から顔を上げた。
目の前で紺色のコート姿の後輩が白い歯を見せて立っていた。
「おお、西村。久しぶりだな。まぁ座れよ」
「先に飲み物を買ってきますね」
西村は短く刈った頭を下げると、
鞄と柔和な笑顔を席に残してレジへと向かった。
「お待たせしました」
ショートサイズの飲み物を手にした西村が戻ってきた。
「おう。いいから座れ座れ。なんだそれは本日のコーヒーか?」
「いえキャラメルマキアートです」
「なんだお前は。オンナか!」
「相変わらずですね。先輩は」
西村は苦笑しながらコートを脱ぎ、ソファに腰掛けた。
「元気にしてたか?お前から電話なんて珍しいから驚いたよ」
「すみません。急に呼び出してしまって」
「いいんだよ。今日は合コンもない日だしな」
俺はそう言ってコーヒーを啜った。
「実は相談なんですが――」
西村は顔をきゅっと引き締め、話し出した。
* * *
「なるほどなぁ。お前惜しいことしたなぁ。
チャンスの神様に後ろ髪は無いってやつか。
そんな美味しい話はなかなかないぜ。
でも俺の所に持ってこられてもなぁ。
今の所、投資には全く興味がないんだよ。
すまんが、今回は力になれないな」
「そうですか・・・・・・」
西村は顔を曇らせた。
「分かりました。先輩、今日はありがとうございました。
僕、次の約束がありますのでこれで失礼します。
お時間を取らせてすみませんでした」
「あ、ああ。悪かったな。また電話しろよな。今度はメシ奢るから」
「はい。ありがとうございます」
立ち上がった西村は丁寧に頭を下げた。
「ではまた」
背中を向けた西村の後頭部は、
小さな円形に禿げていた。
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わ〜ん、一番乗りになっちゃった・・
実は、オチがよくわかんなくて
このまま帰ろうかと思ったけど T。T
正直に書いて帰ります。
あしたまた来ます☆
小説ブログランキング10位、すごい♪
西村君がチャンスの神様だったわけですね。
先輩はそれを逃しちゃった、バカ〜
でも投資だなんて
誰だって足踏みしてしまうよね。
この先輩って描写から
なかなかかっこいいらしい気配が
伝わってきます。
あれ?セリフの中の
>「普段は地味――」
変わってる?
昨日は「じ――」で終わってた気がする。
だから「痔」かと思っちゃった。ウソ
こんばんみ^^
一番ノリは気まずいっすか?(笑)
これは主人公もモヤモヤしてると思います。
「もしかして今のあいつの話・・・・・・」
でつるさんのコメのように連想するかどうか?
もやもやした感じでも正解だと思いますw
ランキング落ちてました!
10位以内はどうしても維持できないですねぇw
こんばんは。
先輩も西村の後ろ姿に声かけられなかったみたい(笑)
で風の噂で「あいつ一山当てたらしいよ」
なんて・・・・・・( ´艸`)
あ。改稿ばれた・・・・・・
うー、今日も頭がさえないわたしです・・
恥をしのんで聞いてもよいですか?
「なるほどなぁ。おまえ惜しいことしたなぁ・・・」←ってことは、西村くんもチャンスを逃した?
で、西村くん、円形脱毛になったのは・・・←投資がうまくいかなかったから?
でも、西村くんは、チャンスの神様だったかもしれない・・・(?)と
先輩はもやもやしている?
あれ〜だめだ〜ニブイわたしを許して〜
>「いいんだよ。今日は合コンもない日だしな」
俺はそう言ってコーヒーを啜った。<と
>「いえキャラメルマキアートです」
「なんだお前は。オンナか!」<
のところ、思いっきり楽しみました!
二度目のこんばんみ!
いえいえ質問はいつでもウェルカムですよ〜^^
そもそも僕が不親切な書き方してるんで(笑)
意図したオチとしては、
この先輩は後輩がチャンスの神様を逃がした事を指摘しておきながら、
自身も投資話を断る事によってチャンスの神様を逃がした――のかも知れない。
という感じですね。それを後輩のハゲが暗示していると。
でもひょっとすると只の神経性のハゲかもしれない。
ラストに「後日、西村が一山当てた」という一行を加えてもいいのですが、
短編の場合、100%書かずに80%ぐらいで抑えて読み手に投げるほうが、
余韻が残るような気がするんですよ。
それがいつもぼかした結末を書く理由ですね(笑)
答えはこうです。というのは無くて、読み手がそれぞれ自分なりの解釈を見つけてくれたら楽しいな。
なんて考えています。自分の想像以上に読んで下さる方の中で物語が膨らむと嬉しいですもん。
また引っかかる事があればなんでも訊いてくださいね!
今後の参考にもなりますので。
いつも本当にありがとうございます☆
冴えた頭の昼間からやって来ました(笑)
優しいレイバックさんのおかげで、
今度は完璧に理解しました☆
ホント、スイマセンm(__)m
もっと感度を上げて行きたいです。
見放さないでくださいね☆
コメント欄の皆さんに迷惑かけていないか
心配です☆(みなさん、ごめんなさい。)
今日は疲れていたんだけど
大笑いさせていただきました。
後ろ髪さえあればねぇ〜残念(^^;
こんばんは。
いえいえ〜大げさですよ〜〜(笑)
これも練習のようなもんなんで、
感想頂けるだけで十分Happyですから^^
こんばんは^^
お疲れのところありがとうございます。
これはあまり上手く書けなかったですw
今、ハードボイルド読んでるんで、
前半のそれ風の部分が
書きたかっただけなんですよね〜w
どうしても、読むほうはそれを求めるけど、
派手なトリッキーさより、淡々と話を追って、読み手に思考を促すような、
こういうお話も、短編のあり方のような気がしまーす。
投資ってなんだろ、株かな。
こんばんは^^
そうですよねー、ブログを書き出した頃は、
何が何でもオチを付けなければ・・・・・・
なんて思ってましたが、それはそれで類型化しちゃいますもんね。
投資はおそらく株でしょう。詳しくないのでボカしてます(笑)