私は人間観察が好きだ。
だが、私の想像力が逞しすぎる為、
しばしばそれは人間観察を通り越して、
プロファイリングの域にまで達してしまう。
ある朝、電車に乗ると、目の前に一人の若い男が座っていた。
身体にフィットしたライトグレイのスーツに、
淡いピンク色のネクタイ。太くて黒いセルフレームの眼鏡。
身に着けた物だけを見ると、小綺麗で流行のスタイルだが、
その顔は何日も着たままのYシャツのようにやつれ果てていた。
目の下の隈が蓄積した疲れを物語っている。
毎日毎日残業続きでほとんど休みも取れない状態、
おそらくそんなところだろう。
男は本を読んでいた。
新書サイズでブックカバーは掛けられていない。
私はさりげなく身体の角度を変え、
その本のタイトルを覗き見ようとした。
何? 行儀が悪い?
そんな事はない。
人が読んでいる本が気になるのは、
古今東西万国共通、至って自然な人間心理なのだ。
○&%$#
読めない・・・・・・。
あろうことか男は上下逆さまに本を読んでいた。
私の視線に気付いたのか、男がふっと顔を上げた。
私は咄嗟に目を逸らした。
男は再び本に目を落とし、頁を捲っている。
逆さまだというのに!
しかも今度は、これみよがしに背表紙を見せながら。
ク
カ
ン
ヒ
の
ヒ
ル
ハ
ヤ
ミ
ズ
ス
なるほど下から逆に読んでみると、
どこかで聞いたようなタイトルだ。
降りる駅が近付いてきた。
電車の到着を告げるアナウンスが鳴る。
男は本を閉じ、席を立った。
なんだ私と同じ駅だったのか。
男は電車を降りると、そのまま階段に向かう人込みに紛れて姿を消した。
明くる日。
珍しく寝坊した私は、ギリギリのタイミングで電車に駆け込んだ。
すると斜め前に座っている男と目が合った。
昨日の男だ。
今日は昨日と乗り込んだ車両が違うのに何故だろう。
電車通勤するサラリーマンは毎日同じ車両に乗るものだが・・・・・・。
扉が閉まり電車が走り出した。
私は目の前の吊革を掴み、観察を始めた。
男のスーツは濃紺に、ネクタイは水色に変わっている。
しかし目の下の隈はそのままだった。
そして――
上下逆さまの本も。
「スズミヤハルヒのヒンカク」
ついタイトルを覚えてしまった。
男は耳にインナーイヤータイプの白いヘッドフォンをはめ、
軽くノリノリな様子で頁を捲っている。
しつこいがもう一度言っておこう。
逆さまだというのに!
私は横目でチラチラと男を観察し続けた。
既婚だな。(薬指の指輪)
キレイ好き。(手入れされた爪)
モノにはこだわるタイプ。(ヘッドフォンがJBL製)
恐らくクルマは外車を選びそうだ。
メルセデス、BMWなどベタなところは敢えて避け、
シトロエン、もしくはアルファロメオあたりがお好みか。
いやスーツや髪型の固さを見るとイタリア車はないな。
ズバリ。遊び心とエスプリの効いたシトロエンが本命だ。
男の観察と分析に没頭しているといつの間にか駅に着いてしまった。
“逆さま本”の謎がまだ解けていないというのに、
余計なプロファイリングに時間を使ってしまうとは。
こんな事ではFBI捜査官にはなれない。
人波に揉まれながら私と男は、ほぼ同じタイミングで電車を降りた。
私は意を決して、男の肩を叩いた。
「あのー、突然すみません」
「なんでしょう?」
男は私から声を掛けられる事を予想していたかのように悠然と振り返った。
「つかぬ事を伺いますが――
何故、本を逆さまに読まれているのですか?」
「ああ。これはね、実は私、
書籍の編集者なのですよ。この本は私が手がけた本でしてね。
こうやって毎日電車の中で読んで、書名をアピールしている訳です」
「しかし、本は逆さまでしたよ?昨日も今日も」
私は肝心なところを訊いてみた。
「だって本が逆さまだと、余計に気になるでしょ?
あいつは何を読んでいるんだ?ってね。
それで書名を覚えてもらうと言うわけです。
ちなみにカバーだけが逆さまで中身はそのままなんですよ」
男はにこやかに本を差し出した。
「参りました」
やはり、私はFBI捜査官にはなれそうにない。
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すずみやハルヒ。手を出しにくいんですが、一作目は普通に面白いらしいですね。
今度読んでみようかな。
始めは鏡を見てるのかな、と思いましたが、
レイバックさんの言う通り「ガセの伏線に振り回された」ようです。
ここでわたしもレイバックさんのプロファイリングをしてみましょうか。
確か↑って
当てっこするものではないんですよね。
一つの仮定をたてて、それを一つずつ潰してターゲットを絞り込んでいく作業ですよね。
いきますよ。
まず、学校の教師を疑いました。
何故ならレイバックさんの書くものに出てこないから。
つまり、同業者は同業者を敬遠するってやつです。
これは、わたしのコメに「父兄」と書き込まれたことで消えました。
何故なら、学校関係者は概ね「保護者」を使います。
次は医療関係者を疑っています。
まだまだプロファイリングは続きます。
ガセの伏線。そうか。その方法があったか。(今さら。笑)
あ、今年もどうぞヨロシクです。(←これも今さらですが)
こんばんは。お久しぶりです^^
スズミヤハルヒ実は読んだ事ないんですw
僕も今度書店でパラパラと読んでみます。
こんばんは☆
こいつは自分でも何が書きたかったのかさっぱり・・・(笑)
何回も書き直したのでかなり混乱してます。
おお。私の正体が・・・
実は以前、お話の中で・・・・・・( ´艸`)
こんばんは^^
実際はほとんど伏線らしい伏線もないですからね。
無駄な文を書いて煙に巻いてみましたw
こちらこそ今年もよろしくお願いします☆
お話の中で正体を白状していたの?
あ、じゃああれだ!事件を解決しない探偵だ。(バカ〜)
おはよ^^
ヒントはありましたね(笑)
引越しビンボーのia.です。
ムダに忙しくて、ネットもゆっくりできません。
これ面白かったです〜♪
意外な結末がすごく好き!
こんばんは。
いえいえ無問題ですよ〜〜(笑)
引越ししたあとダンボールの中身片すの大変ですよねー。
手伝いましょか??w
ありがとうございます♪
これはあんま書いてないパターンかも知れないすね^^
あたま冴え冴えの昼間っからやってきました♪
あー小説っていいなーっと思いました。
レイバックさんの一行一が、
まるで自分がそこにいるみたいにさせてくれて、
自分もその電車で通勤している感じがしました。
きょうははっきり結末が書いてあって
それも意外な気がしました。(はじめて?)
こんばんは。
お昼間からありがとうございます♪
行動の描写はいつも書いてるんですけど、
説明文や風景の描写が上手く挿入出来ないんですよねぇ。
今後の課題です。
こいつは一応“日常の謎”系ミステリーなので、
答えがスッキリ出ないと気持ち悪いですよね^^
ハルヒか、どうも合わない気がして、いまだ読んでないなぁ。Lノベルもたまーに読むとおもろいですけどね。
うははw煙幕張りまくりでしたねw
ハルヒどころかラノベ自体読んだ事ないんですよねー^^;
でも、面白いのあったら読んでみたいです。