先週、大学の仲間と花見をしたんだ。
うん。言いだしっぺはオレ。
明日行こう!明日!
つっても急だったから場所のあても無くてさ。
そしたら祐二が、ウチの近所の公園の桜、今丁度キレイだよ。
って言ってくれて、場所はそこにそっこー決定。
次の日に集まれるやつだけ集まったんだ。
男女合わせて8人だったかな。
え?場所取り?
いや祐二がそんなに混まないよって言うからさ。
余裕ぶっこいて昼の12時に現地集合だよ。
ところがどっこい。着いたら混んでんの。これが。
出たっ!また祐二のガセネタだよ〜。
なんてみんなに言われてさぁアイツ。バカだよねぇ。
とりあえず桜の木が密集してるポイントはもうムリっぽかったから、
結局、少し離れた場所の桜の下にブルーシートを広げたんだ。
いや人けは少なかったけど、あの桜の木もなかなか見事だったよ。
ピンク色が他の木より若干濃い感じでさ。
枝もブワァーっと広がっててさ。
少し葉桜になりかけてたけどね。
え?そりゃあいっぱい飲みましたよぉ。
学生のお花見なんてねぇ?
お酒飲んで騒げりゃいいって感じなんだから。
で、みんないい感じに酔ってきたところで、
例のごとく、陽子が言い出したんだよね。
ねぇ誰かぁ、怖い話してよぉーってさ。
また始まったよ、なんてみんな苦笑い。
アイツいつもそうなんだよね。自分はネタ持ってないくせに、
人に話しろ話しろってせがむのヤメてほしいよねぇ?
まぁブツブツ言いつつ、みんな自分の持ちネタを披露するんだけどさ。
この日は珍しく祐二も話してたなぁ。
アイツ普段はそんなに中心になって喋るタイプじゃないからね。
どっちかっつうと聞き役なのかな。
で、祐二がポツリポツリと話し始めたのが、こんな話だったんだ。
☆ ☆ ☆
「あれはオレが中学ぐらいの頃だったかなぁ。
オレん家この公園から歩いても15分ぐらいなんだけどさ。
近所の家で殺人事件が起こったんだよね。
そこは夫婦二人で住んでた一軒家なんだけど、
奥さんの方が行方不明になってさ。旦那が捜索願いを出したんだ。
あとはなんとなく想像付くでしょ?
そう。やっぱりその時の旦那の言動がおかしかったみたいなんだよね。
不審に思った警察が家を捜索すると、血痕なんかが見つかったらしい。
旦那を問い詰めてみたら、私がやりました。って白状したんだって。
ほんとよくある話だよね。
オレもまさか自分の近所で起こるとは思わなかったけどさ。
ところがね、その奥さんの遺体が、結局見つからなかったんだよ。
旦那は私がやりました、申し訳ありません。
妻の事はもうそっとしておいてやってください。
って言うばかりで、遺体のありかだけは決して口を割らなかったんだ。
動機はなんか、口論でカッとなった。って事らしいんだけど、
普段は普通に仲いい夫婦だったみたいなんだよね。
あくまで噂だよ?
でもこういう近所の噂って意外に信頼性あるじゃん。
奥さんは見つからないけど、旦那の自白があった訳だから、
当然、逮捕されるよね?
それがさぁ、拘置所に拘留されてる間に、
その旦那の方もポックリ逝っちゃったんだよ。
ビックリでしょ?
聞くところによると、元々心臓が良くなかったらしい。
やっぱり悪い事はできないよね。
天罰が下ったんだ。なんてウチのばぁちゃんは言ってたけど。
それでね、最後にその旦那が拘置所の係官に言った言葉がさ、
『うちの家内はとても桜が好きでした。
私はなぜあんな事をしてしまったんだろう。
今年の桜を見せてやりたかった……』
だったんだって。
もちろん、これも噂だよ?ここまで新聞やニュースには出てないからさ。
で、その後しばらくのあいだ、街でひそかに囁かれてたんだ。
奥さんはこの公園の桜の木の下に埋められたんじゃないか?
ってさ。
え?バカだなぁ。
警察はそんな噂話程度で、公園の桜を寝こそぎ掘り返したりしないさ。
だから、結局真相は分からずじまいって訳。
以上、おしまい!」
☆ ☆ ☆
そこで一瞬、空気が固まったんだけどね。
おいおい祐二ぃ、なんなんだよー。
その締まりの無い話はよー。
って、当然みんなブーイング。
でもよく見るとさ、ウチらの上にかぶさってた桜の枝の花びら。
ピンク色が妙に濃いんだよ。え?さっきも言った?まぁいいじゃん。
みんな祐二の話を聞いてからは、桜の木を見上げたり、
自分の足元をじっと見てみたり、急にそわそわしだしてさ。
なんか気味悪いじゃん。
だから、またそっからペースを上げて飲みだしたんだ。
いやぁ花びらがひらひらと舞ってて綺麗だったなぁ。
なに?酔ってたくせにって?
うるせー。酔ってても分かる人には分かるんだよ。
ただ、オレの紙コップの酒に花びらが落ちた時。
赤いインクが波紋になって広がるように、
一瞬見えたんだけど……
ま、まぁ、あれは酔っ払ってたからだな。
どうせ祐二の話だし、ガセネタ、ガセネタ。
どう? お前も今度行ってみる?
あの公園に。
スコップ持って。
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・・・って、怖いよ!
夜中に読むんだから、気を付けてよね。
先にトイレに行っておけば良かった(><)
夜桜見てはしゃぐ気持ちがわからない。感性疑います。あれは、人を沈黙させるものだよ。
夏じゃないのに(怪談話の旬)十分怖かったです。
こんばんは。
そうそう。桜の木の下には〜ですよね。
うひゃひゃwそんなに怖くなかったでしょヾ(´▽`;)
つるさん>
こんばんは。分かる?分かる?
オレそもそも、あんま賑やかな花見って好きじゃないんですわ。
桜ってなんだか迫力がありますよねー^^
始まったとき、トイレットペーパーが薄ぼんやりと赤く染まるの。
あーシモネタ注意報だ。
おい(笑)
そういうのってまったく知らない世界なんで、
参考になります!(なんの参考だよw)
つるさんに見られたら怒られちゃうじゃんヾ(´▽`;)
「桜の下には死体が埋まってる」
花見の席で怪談スタートってところが
いいですね!
ちょっと先取りがいいタイミングです!
こんばんは^^
梶井基次郎が書いていたのは知ってましたが、
それ以前はどうなんでしょう?
想像すると不気味ですよね。
はい。もうすぐシーズンなので先取りです!
(実は去年の春に書いたモノなんですが(笑))
こんにちは☆
わ 桜のはかないイメージに加え、
今日はちょっと、桜が妖艶に感じるストーリーでした。
なんか祐二くんの話が始まる前の、
なにげな祐二くんの描写がとってもよかったです!
こんばんは☆ありがとうございます!
これモタモタしてるし下手くそですよねー、
ちょっと恥ずかしいです(笑)
そろそろ大阪も桜が咲いてきました。
キレイだなぁと思いながらも、
いろいろと妄想してしまうのです(´ー`)