今日はひとつショートショートの書き方を考えてみようと思います。
(前置きが長いです。書き方をはよ。という方はAAのあとからどうぞ。)
まずショートショートとは何か?
一般的には、話にオチが付いていて、奇妙な味わいがある短い小説といったところでしょうか。
日本では「ショートショートと言えば星新一」という声がまだまだ根強いので、どうしても星新一さんの作品のカラーがショートショートという言葉のイメージに直結してしまっているように感じられます。一方、ショートショートが生まれた国、アメリカでは、ショートショートのような超短編小説は、サドンフィクションや、フラッシュフィクションとも呼ばれていて、多種多様なお話が書かれているようです。
実際に「サドンフィクション
もちろんアイロニカルでオチのある話は面白いものですし私も好きでよく書くのですが、ショートショート=星新一的なお話でなきゃダメだ。という凝り固まった原理主義(日本のショートショートの書き手、読み手の中にはそういう人が少なくないのです)は、ショートショートというジャンル自体を弱体化させることにも繋がりかねないので、あまりよろしくないのではないかと、最近では考えています。多様性を失って先鋭化した種は最終的には滅びる運命ですから。
オチのある話でもつまらないものはつまらないですし、オチのない話でも面白いものは面白いですよね。
どっちもあっていいじゃない。大切なのは多様性を認めることだと思うのです。
さて、私の考えはともかくとして、どの国のどのショートショート作品にも必ず共通するのは「とても短い」というところではないでしょうか。ちなみに過去には星新一さんが選者をされていて、現在は阿刀田高さんが選者を務めていらっしゃる小説現代ショートショートコンテストの応募要項を見てみますと、長さの規定は400字詰め原稿用紙に5枚以内、となっています。
やはり短いですね。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・) バンバンバンバン゙ン
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バン はよ
バン(∩`・д・) バン はよ
/ ミつ/ ̄ ̄ ̄/
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( ´・ω((´:,(’ ,; ;'),`
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ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
ポチ ポチポチポチポチポチポチ
ポチ(∩`・ω・) ポチポチポチポチポチ
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失礼。前置きが長いですね。(いちどこのAAを貼ってみたかった)
ショートショートや短篇を書く時に、いつも私の頭によぎる言葉があります。
それはアメリカの評論家、ロバート・オバーファーストという人が提唱した、短編小説の三原則というものです。
「斬新なアイデア、完全なプロット、意外な結末」(※プロットとは小説の骨組み、構造といった意)。この三つです。
いかがでしょう? これは、そのまま日本的なショートショートの条件としても通用するのではないでしょうか。
では、意外な結末=オチやひねりということで(前段ではぐずぐずと言いましたがw)、今日は敢えてオチやひねりのあるお話の作り方を解説してみたいと思います。
ここからは実例を挙げていきます。
お手本の作品はオー・ヘンリーの「赤い酋長の身代金」。
オー・ヘンリーと言えば、言わずと知れた短篇の名手ですね。
「賢者の贈り物」、「最後の一葉」など、ショートショート的な味わいを持った作品も多数書いています。
本編の要約を読む前に、まず設定と物語構造を見てみましょう。
(以下ネタバレします)
このお話の設定は、「悪党二人組が裕福な家の少年を身代金目的で誘拐する。」です。
ではこの設定で普通に何もひねらずにフローチャート(話の流れ)を作ればどうなるか?
2つほど考えてみました。
(以下、犯人側からの視点です)
・悪党二人が金持ちの息子を誘拐する→身代金を要求する→身代金の受け取り→人質の解放。悪党は逃走。
・悪党二人が金持ちの息子を誘拐する→身代金を要求する→身代金の受け取りに失敗→悪党は逮捕。人質の解放。
普通ですね。これではオチやひねりのあるショートショートにはなりません。
細かく細かく枝葉を書いてゆけばミステリーやサスペンスにはなるでしょうが、枚数の少ないショートショートではちと厳しい。
ではどうするか? オー・ヘンリー先生はどうしたか?
お待たせしました。ここでやっと本編の要約です。
悪党のビルとサムは、いかさま土地周旋の元手を得るために、アラバマ州の田舎町の有力者ドーセット氏の息子を誘拐する。ところが、この少年は実はとんでもない腕白坊主で、自分をインディアンの「赤い酋長」と名乗り、ビルをまぬけな白人猟師の「オールド・ハンク」サムをスパイの「スネーク・アイ」と勝手に命名、家から離れた洞窟に連れて来られてもかえって喜ぶ始末。挙句の果てにビルの頭の皮をはごうとする。
二人は身代金を期待するがドーセット氏は平然とした様子、身代金を値切って脅迫状を出すが、あべこべに250ドルで息子を引き取ろうと申し出る手紙が届いただけだった。
少年の腕白ぶりに恐れをなした悪党達は、ドーセット氏の申し出たとおりの金額を払い、何とか逃げ出すことが出来た。
(以上、Wikipedia 赤い酋長の身代金 より引用)
ベタですね(笑) ベタですが面白い。オチというよりは、ひねりが効いているお話です。
(要約なので面白みが伝わりにくいところもあると思います。すみません。)
さきほどと同じように、このお話のフローチャートを作ってみましょう。
(やはり犯人側からの視点です)
・悪党二人が金持ちの息子を誘拐する。→身代金を要求するが、逆に引き取り金を請求される→引き取り金の支払い→人質から解放される。
こうなります。
では、先述した2つのフローチャートと、このお話のフローチャートでは、どこに違いがあるのでしょうか。
こう変わっています。
「身代金を要求する」 のところが 「身代金を要求するが、逆に引き取り金を請求される」 に、
「身代金の受け取り」 のところが 「引き取り金の支払い」 に、
そしてここが一番のキモ。
「人質を解放する」 のところが 「人質から解放される」 に変わっています。
ずばり。この変わったあとのフローチャートを導き出すのがオチやひねりのあるお話の作り方です。
ある設定及びシチュエーションから、常識的な展開をまず考えておいて、その結末部分をひっくり返す。
大事な事なのでもう一度言います。
ある設定及びシチュエーションから、常識的な展開(ストーリーライン)をまず考えておいて、その結末部分をひっくり返す。
「悪党が少年を解放する」→「悪党が少年から解放される」
このように結末をまず裏返しておいて、その「意外な結末」から逆算して芋づる式にプロットやキャラを立てていくやり口です。
考えてみて下さい。
この結末にたどり着くためには、マヌケな悪党たちや、超やんちゃな少年というキャラクターが必要になってきますよね。
タフな悪党コンビと、生真面目な少年では成り立たないお話だからです。
さらにふくらませてみます。
少年があまりにもやんちゃ過ぎるので父親も困り果てていた。
誘拐してくれてちょうどよかった。(ここがちょっと現実離れしていておかしいですけど、まあ昔のお話なのでw)
返してもらわなくていいが、金を払うのなら引き取ってやってもいい。
このように「意外な結末」をまず立てることによって、自然とお話の全体像が浮かび上がってきます。
・悪党二人が金持ちの息子を誘拐する。→身代金を要求するが、逆に引き取り金を請求される→引き取り金の支払い→人質から解放される。
さきほど書き出したこのフローチャートが、そのままプロット(物語の骨組み)になります。
(誘拐→引き取り金を請求される。この間には当然、やんちゃな少年による悪党いびりや、食えないキャラの父親との交渉が入ります)
プロットさえ組み上がれば、あとはその骨組みに肉付けしてやれば、お話のできあがりです。
※ 余談ですが、映画「ホーム・アローン」は、このプロットを部分的に流用していますね。
では実例をもう一つ。
「バレンタインデーの日。学校で持ち物検査が行われる」
さて、この設定では、どうなるでしょう? 何が起こるでしょうか?
以下は私が今年のバレンタインデーに書いたツイッター小説(140字小説)です。
バレンタインデーで盛り上がるのは結構だが学校での受け渡しは困る。私の主導で持ち物検査を行う事になった。校門前で鞄を開けさせ全てのチョコを没収する。下校時にチョコを返却していると一人だけ返してくれなくていいという生徒がいた。「どうした。もうふられたのか?」「鈍感」 #twnovel
— layback (@laybacks) February 13, 2012
お話の出来は怪しいものですが、一応オチがついていますね。
では、これをさきほどとおなじようにフローチャートにしてみます。
(先生側からの視点です)
・ある生徒が学校にチョコを持ってくる→持ち物検査→チョコ没収→放課後に返却 (普通)
・ある生徒が学校にチョコを持ってくる→持ち物検査→チョコ没収→放課後に返却を断られる (反転)
「バレンタインデー、持ち物検査」
という単純な設定から思いついた筋書きの結末部分だけをひっくり返し、そこから逆算してまとめたお話です。
とまあこういった具合に、シチュエーションさえ設定してしまえば、けっこう簡単にオチやひねりのある話は書けるものです。
ただし、上手く読者を欺いて感心させるためには、情報の隠匿や、伏線とその回収、といったテクニックが必要になってきます。
そこはたくさん先行作品を読んで、たくさん書いて、身に付けていくしかないでしょう。
あとは、まずスタートラインである設定、シチュエーションを考えることが大事ですね。
これはバレンタインデーやクリスマスなどのイベントを元にしてもよいですし、
自分の身の回りにおこったこと、電車の車内でみかけたこと、レストランでみかけたこと、なんでもよいと思います。
ショートショートに限らず、小説を書くということは、写真を撮ることと同じだと思うのです。
写真家はカメラを手に被写体を探して街を歩く。小説家はネタになりそうなものにつねに目を光らせ、聞き耳を立てておく。
小説を書きはじめると、街、人、物、すべての事象を見る目が、以前とは変わってくるはずです。
先行作品の設定だけを拝借するのもアリだと思います。
今だと、お題配布サイトなどを利用するのもいいですね。
ぐだぐだと書いてまいりましたが、これからショートショートを書いてみようと思われている方の参考に、少しでもなれば幸いです。(今日書いた内容はあくまで一例ですのでそこだけはご了承下さい。)
もっと他の書き方も紹介しようと思っていたのですが、書きなれない文章を書いて力尽きたので、今回はこのあたりで。
長々と失礼いたしました。
最後まで読んでくださった方お疲れ様です(笑) ありがとうございました。

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)
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