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「Dear Mama」



夢が叶う。

今夜。

これで母ちゃんに親孝行が出来る。

そう考えると・・・・・・

バカ野郎。泣くな。

これから本番だろうが。

さぁ前ぇ向け。

行くぞ。

白組は、中村ユウゴォッ!!

俺は両手を高々と挙げ、舞台の袖から飛び出した。

あとの記憶は真っ白だった。

ただがむしゃらにギターを掻き鳴らし、歌った。

のだと思う。

覚えてないのだからしょうがない。

母ちゃんが毎年楽しみにしてた紅白に出れる日が来るなんて。

実際には、

俺が街中でそれほど認知されてないってことも。

大御所の演歌歌手からはADだって思われてたことも。

何より話題づくりの為に呼ばれたってことも。

全部分かってる。

でも紅白に出たって事実は変わらない。

エンディングを迎えた舞台では何十人もの出演者達が、

希望に満ちた表情で司会者の言葉に耳を傾けていた。

俺は後ろの方の列に紛れながら天を見上げた。

母ちゃん見ててくれたかな。

白組の勝利です!

白組だろうが赤組だろうがどうでも良かった。

テレビの前で観てる人は勝ち負けなんて気にしてない。

だが俺が白組に迎えられた事で、

勇気付けられたヤツはいるかもしれない。

割れんばかりの歓声の中から、

母ちゃんの声が聞こえたような気がした。

優子ー、お蕎麦出来たよー。

ああ蕎麦食いたい。

年越し蕎麦。

母ちゃんの側で。

来年はきっといい年になる。

盛大な拍手と紙吹雪を浴びながら、

俺は無責任にそう思う。











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「編集長」



「どうだ?松方君は引き受けてくれたか?」

「申し訳ありません。ダメでした」

「そうか。今後、我が社の雑誌は、全て女性の編集長に任せるつもりなんだが、

あそこの編集部だけは、どの女性社員に打診しても拒絶されるな。

働きマンの松方君ならやってくれるかと思ったが、やはりダメだったか」

「社長、雑誌名をなんとかするのが先決かと・・・・・・」

「名前が悪いか。そういう意味ではないんだが。残念だな」

「やはり皆、恥ずかしさが、ネックになっているようなんです」

「【男性自身】いい名前じゃないか力強くて」

「はぁ・・・・・・」

「どうだ?キミがやってみるか?編集長」

「いえ。遠慮させて頂きますわ。恥ずかしいので」










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