1 「あなたも知っての通り、我が家の財政は破綻寸前です。そこでね、事業仕分けをしようと思うの。まずあなたのお小遣いは半分。あと無意味な育毛も止めてもらいますからね」「むぅ黙って聞いてれば……。じゃあお前のその美容整形はどうなんだよ!」「あら必要な公共事業もあるのよ」
2 ああもう! 蚊の羽音がうるさくて寝れやしない。「おい、蚊取り器あったよな」「ん……、切らしてるわ」「じゃあ蚊取り線香でも蚊帳でも何でもいいよ、何かあるだろう。蚊がうるさくて寝れないんだよ」妻はごそごそと枕元を探り、何かを手渡してくる。「はい、どうぞ」耳栓だった。
3 「あなた、こんどあやの授業参観があるの」「分かった。俺が行くよ」「あなた最近妙に授業参観とか学校の行事に積極的じゃない」「やっぱりうちは共働きだしな。育児関係の負担は分担しないと」「ふうん。これあやが書いた短冊よ、見て」【パパがはやくせんせいとわかれますように】
4 眠い目を擦りながらトイレに行くと便器の中に髪の毛が落ちていた。水面に浮かんだ二本の髪は絡み合うように二重螺旋を描き仲睦まじく泳いでいる。気味悪いのですぐに流した。だが何度流しても翌朝にはまた髪が浮かんでいる。タンクの蓋を開けてみると屍蝋化した女の頭が沈んでいた。
5 「若者世代と年長世代との間で格差が広がっているのですから、消費税増税ではこのギャップは埋まりませんよ」「すると資産課税の強化か」「いけません。時代は官から民へ。ベンチャー企業を支援しましょう」「業種は?」「年長者から若者への所得移転事業。つまり振り込め詐欺です」
6 「なんで浴衣着てるねん」「花火いく」「あかん、熱あるんやろ」「来年亮くんとまた一緒に見られるかどうかわからへんもん」「なんでやねん」「さいきんつめたいやろ。そろそろ別れよとか思てるんやろ」「あほ、思てないよ」「うちわかるねん。だから、最後でもいいから、花火いこ」
7 花火大会の翌朝犬を連れ河川敷を散歩していると、袋を手に何かを拾い集めている人がいる。「ゴミ拾いですか」彼は薄茶色の紙片を私に見せる。「花火カスです」咲く花があれば当然散り落ちる花弁もあるのだ。私は袋を貰い、夏の欠片を拾い始めた。犬は不思議そうな目で私を見ていた。
8 せっかくの大阪出張なので立ち呑み屋に入ってみた。「いらっっしゃい!」威勢がいい。とりあえず生を頼んで壁の品書きを見ていると「お兄ちゃん、混んできたからダークダックスで!」「は?」隣のおじさんが教えてくれる。「肩と肩がぶつからんようにな、こうやって斜めに立つんや」
9 「雲ばっかだね」「だね」「これじゃ流星群見れないね」「見れないね」「晴れると思う?」「晴れないと思う」「眠い?」「眠い」「クルマに戻る?」「戻る」そんな会話のあと眠気混じりで彼女と交わった時に俺の放った流星群のうちの一発がHitしてお前が生まれたんだ。分かるか?
10 生後八ヶ月になる娘が突然ハイハイを覚えた。イラストレーターである私は外で編集者との打ち合わせがあった為、失業中の夫に部屋の物を片付けるように頼んだ。「小さい物とか飲み込むと危ないから。あとヒモなんかもよろしくね」帰宅すると夫がいない。小物と一緒にダンボールに入っていた。
11 「パパー、あや、たこあげしたい」「あやちゃん空を見てごらん。鉄塔さんと鉄塔さんがあやとりしてるでしょ。あやもあやとり好きだよね。凧揚げすると邪魔になるからやめようね」「うん……かわいそうだし」「何が可哀想なの?」「だっててっとうさん『川』しかつくれないんでしょ」
12 いつものように部屋に引きこもってエロゲをやっているといきなり机の引き出しから若い男が飛び出してきた。「うわっ!」「やあパパ」「は? 君だれ?」「パパの息子だよ。未来からやってきたんだ」「ええっ!?」「驚くのも無理ないけど――」「俺結婚出来たんだ!?」「そこかよ」
13 「だって手が汚れるの嫌じゃん」彼は涼しげな顔でそう言う。彼は何でも箸を使って食べるのだ。ポテトチップもハンバーガーもお団子も。確かに変わった人ではある。だが私はそんな彼を深く愛していた。ただ、いつも電気を消して貰うので何も見えないのだが、彼の愛撫は、少し、痛い。
※ なぜ「140字」なのか?
140字という数はTwitterで投稿できる文字数の上限です。
現在、その枠内で短い小説を書かれている方が大勢いらっしゃいます。
僭越ながら私がセレクトしました傑作140字小説(ツイッター小説)を、
記事下部のリンク先にて紹介しておりますので、興味を持たれた方はぜひご覧になってみてくださいね。
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