空の端で、ざらついたブルーと、
くすんだオレンジが境界を争う時間帯。
ピンク色の雲を見た。
太陽が去り際に、一瞬だけ放つ色。
今、空を見上げたオレはツイてる。
視線を下ろすと、必死に自転車を漕ぐ子供。
早く帰らないと母親に怒られるぞ。
後にもう一台が続く。
弟が兄のケツを追っている。
二人とも小学校低学年だろう。
兄が弟に声を掛けた。
ママが帰ってきたら、すぐ、
ごはん食べれるようにしとこうな!
うん!
二人の男は、力強くペダルを漕ぎ、
目の前を通り過ぎていく。
お母さん。
立派に育ってますよ、お宅の子供。
共働きで家事もこなしていた
自分の母を思い出し、
少し涙腺がゆるんだ。
顔を上げる。
陽は沈み、薄紫色の空が
月の訪れを待っている。
今度の連休には家に帰ろう。
そうだ、忘れないうちに――
鞄から携帯を取り出し、
実家の番号をプッシュした。
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