「いやぁ、今日もこの会場に来るのに、渋滞で大変でしたわ」
「ほんま混んでたねぇ、まぁクルマの多いこと多いこと」
「そうそう、クルマで思い出したけど、
今、幕張メッセで東京モーターショーやってるらしいね」
「へぇー、そうなんや?」
「なんやレクサスから、どえらいスポーツカーが発表されてるらしいわ」
「ほうほう、そら気になるなぁ」
「V8エンジンで何百馬力も出すらしいよ」
「そないパワーUPして、いったい日本のどこ走るねんな」
「そらそやなぁ。でもキミ、そんなことで驚いてたらあかん。
海外のクルマはそんなもんやないで。
V10エンジンにV12エンジン。
値段は何千万円。
もうここまできたら、F1マシンみたいなもんやがな」
「はぁー、頭イタなってきた。僕ら貧乏人には理解不能の世界やわ」
「せやろ?そないV10、V12って言われても困るがな。
まぁ、そこの最前列に座ってはるお父さん世代でも、
せいぜい分かるのはV9時代?」
「それは巨人やろ!」
「うーん。そこのお姉さん世代でV6?」
「それはジャニーズ!」
「僕ら世代やったら、もうV3でいっぱいいっぱいやがな」
「仮面ライダーや!!」
「うるさい、貧乏人」
「お前も給料一緒や!」
「まあ、そういうことにしとこ」
「なんやそれは、ほんまに」
「まあまあ。そこでや。
自動車メーカーもスポーツカーを開発する一方、
環境の事も考えなあかん。という事になってきとる訳や」
「ほうほう、そらええ事やがな」
「せやろ? そこで今、注目されてるのが、電気自動車や。
これは要するにバッテリーでモーターを駆動させて走るクルマやな。
という事は? 分かるな?」
「うーん。ミニ四駆の親玉か?」
「あほ。そういう意味やないねん貧乏人」
「給・料・一・緒っ!!」
「ほんでやな――」
「スルーすな!」
「この電気自動車はな、一滴もガソリンを使わんのや。
それはつまり、CO2排出ゼロっちゅうことや。
どや? 環境に優しいやろ?」
「それは最高やないか!
世界中のクルマが全部、その電気自動車になったら、
地球の空気もきれいになって、北極のシロクマくんも安泰やがな」
「ただな、問題もあるんやな。これが」
「問題ってなんやねんな?」
「聞いて驚くなよ?
そのバッテリーを充電するのに必要な電源が、
なんとV100や!
これはもうケタ違いでっせ!」
「それは100ボルト! もうええわ!」
『どうも、ありがとうございました〜〜〜〜』
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