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「オフサイド」


あと何分だ?

ボールがタッチラインを割った隙に、時計に目をやる。

クソッ。

もうロスタイムも残り僅かだ。

なんとかしなければ。

シュンスケは痛む右膝を気にしながら、緑色に輝くピッチ上を再び駆けだした。

マリナズ対ブレッツの首位攻防戦。

いまだ、点数は1−1のままだった。

このままだとまずい。

あいつとの約束はなんとしても守る。

神様、だから、どうかユウスケの命だけは――

マリナズ側のスローインからリスタートされたボールが中盤の選手に渡る。

先シーズンまで海外のチームでプレーしていたその選手は、しばらくドリブルでキープすると、

ライン際を駆け上がってきた左サイドバックの選手に柔らかいパスを出した。

これがラストチャンスになるかもしれない。

周りの選手の動きを注意深く見ながら、オレは一気にゴールへ向かって走りだした。

スピードに乗ったドリブルで敵陣深くに切り込んだサイドバックの選手が、

相手ディフェンダーに絡まれる前に早めのクロスを上げた。

ボールはブレッツのゴール前に迫ったシュンスケの頭上を越え、

ファーサイドに張っていた長身フォワードの足元に入る。

マークを外された相手ディフェンダーが泡を食って、スライディングタックルを仕掛けた。

苦し紛れではあったがナイス判断だ。

タックルは見事に決まり、こぼれ球は、側にいたディフェンダーによって大きくクリアされた。

長身フォワードは白々しく足を押さえ、その場で倒れている。

タックルは正確にボールに入っていた。

足にはかすってもいないはずだ。

PK狙いの演技なのは明らかだった。

だが。

オレは笛を吹いた。

長身フォワードに対するディフェンダーのファウルを取り、

マリナズ側に、勝利を決定付けるPKを与えてやった。

競技場内のブレッツサポーターからは、悲鳴の様なブーイングが沸き起こる。

ブレッツの選手達は、掴みかからんとばかりにシュンスケに抗議してくる。

だが、審判のジャッジは絶対なのだ。

オレは首を振り、厳しい表情を崩さずに対処した。

マリナズの長身フォワードが蹴ったPKは、当然のようにゴールネットを揺らした。

シュンスケの吹くゴールと試合終了のホイッスルが、連続して競技場に響き渡る。

依頼された八百長試合はなんとか成立させた。

これでオレの元には500万の現金が手に入る。

ユウスケの手術費用が工面できるのだ。

プレッシャーから開放された安堵感と、

ユウスケの命を救えるかもしれないという希望が、

温かいミルクのようにシュンスケの心を満たす。

これで良かったんだ。

たとえ、今夜のオレの行動が、

オフサイドラインを越えていたのだとしても。











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posted by layback at 01:33
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「多感な時期」



「おっすピーター!」

「Hi、タケシ。ドウシマシタ?」

「お前昨日、ミチコとホテル街歩いてただろー。コノコノ〜〜」

「チョ、チョット、コヅカナイでクダサイっテバ!」

「ここだけの話だけどさ・・・・・・」

「ナニ?」

『ミチコって、かわいいんだけど、ちょっと体臭がアレだろ?』

「タケシ! ソンナ事言ッテハダメ!」

「は?」

「イマはダメデス。多汗ナ時期ナンデスカラ!」

「あ? ああ。 まぁ感じやすいお年頃ではあるよな・・・・・・」

「マダソレホド感じヤスクもナイケドネ」

「なんなんだよ!」

「ボクもマイニチイイ汗カイテマスヨ!」

「ほれ見ろ。やる事やってんじゃんよー」

「ソウ言うイミじゃナイケドネ」

「だからなんなんだよ!」

「愛がアレばモンダイナーイネ」

「結局そんなオチかよ・・・・・・」










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