盆休み。久しぶりに帰省すると、同級生から家に電話がかかってきた。
今年は帰ってきてる奴も多いので集まって飲もうという話だった。
俺も懐かしかったので二つ返事でOKした。
一次会の居酒屋でいい具合に出来上がった俺達は、千鳥足で二次会のカラオケに向かった。
俺はてんでばらばらな連中を集合させ、店の受付カウンターに背を預けながら人数を数える。
ひいふうみいよぉ――
「あれ? 10人しかいねーぞ。さっきまで11人いたよな」
俺はしゃきっと姿勢を正し、もう一度ひとりひとり指差して数えてみる。
「やっぱり10人だ」
「ほんとだ」「誰か帰ったっけ?」「帰ってないよ」「おかしいね」
「お盆だし、山田君が帰ってきてたんじゃないの?」
「はぁ?」「なにそれ」
「ほら、いつも阪神帽被ってて、五年生の時に行方不明になった……」
まゆみが細い眉をひそめて言う。
「縁起でもねーこというんじゃねーよ。さ。とっとと部屋行こうぜ」
なんてことを言いながらも、ちょっと気味が悪かったのは事実だ。
ちょうど二時間でカラオケを歌い終え、俺達は再会を約束して解散した。
実家に帰りついた俺は、風呂にも入らずベッドに沈み込んでしまったようだ。
明くる朝。けたたましい携帯の着信音で目が覚めた。
『カラオケワッショイですが、お客様が昨日ご利用になられたお部屋に忘れ物がございましたので』
「忘れ物、ですか?」
俺は眠い目をこすりながら言う。
『ええ、子供サイズの阪神帽なんですが――』
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