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「帰省」


 盆休み。久しぶりに帰省すると、同級生から家に電話がかかってきた。
 今年は帰ってきてる奴も多いので集まって飲もうという話だった。
 俺も懐かしかったので二つ返事でOKした。

 一次会の居酒屋でいい具合に出来上がった俺達は、千鳥足で二次会のカラオケに向かった。
 俺はてんでばらばらな連中を集合させ、店の受付カウンターに背を預けながら人数を数える。

 ひいふうみいよぉ―― 

「あれ? 10人しかいねーぞ。さっきまで11人いたよな」

 俺はしゃきっと姿勢を正し、もう一度ひとりひとり指差して数えてみる。

「やっぱり10人だ」

「ほんとだ」「誰か帰ったっけ?」「帰ってないよ」「おかしいね」

「お盆だし、山田君が帰ってきてたんじゃないの?」

「はぁ?」「なにそれ」

「ほら、いつも阪神帽被ってて、五年生の時に行方不明になった……」

 まゆみが細い眉をひそめて言う。

「縁起でもねーこというんじゃねーよ。さ。とっとと部屋行こうぜ」

 なんてことを言いながらも、ちょっと気味が悪かったのは事実だ。
 ちょうど二時間でカラオケを歌い終え、俺達は再会を約束して解散した。

 実家に帰りついた俺は、風呂にも入らずベッドに沈み込んでしまったようだ。
 明くる朝。けたたましい携帯の着信音で目が覚めた。

『カラオケワッショイですが、お客様が昨日ご利用になられたお部屋に忘れ物がございましたので』

「忘れ物、ですか?」

 俺は眠い目をこすりながら言う。

『ええ、子供サイズの阪神帽なんですが――』














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posted by layback at 10:06
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「祭りのあと」


 フェスに来るのは全くの初めてだった。
 音楽好きの友人や彼女のいない僕はもちろん一人きり。
 でもぼっちでもなんでもいい。いい音楽が聴ければそれでいいのだ。
 Perfumeのステージを観終え、次はOzzyかJay-Zかとぶつぶつ呟きながら歩いていると、いつしか僕は深い森の中に迷い込んでいた。

 方向感覚を失った僕は、けもの道が森の出口に続いていると信じて、ひたすら歩き続けた。
 ん? なにやら前方から音楽が聞こえてくる。
 僕は足を止め、耳を傾ける。
 この曲は――

 ボヘミアンラプソディ! 興奮した僕は音のする方向へ駈け出した。
 凝りに凝ったオペラ調のコーラスが次第に迫ってくる。
 と、突然視界が拓けた。

 木々に囲まれた広場の中央に、紅白幕で覆われたやぐらが組まれている。
 何本ものスポットライトが注がれた舞台の上ではゴージャスな衣装を身に着けたフレディマーキュリーが熱唱していた。

 おそらく僕はあんぐりと口を開けっ放しだっただろう。
 よく見るとフレディの周りにはジョンレノンにジミヘンドリックス、ジェームスブラウンにマイケルジャクソン、なんと忌野清志郎までいる!

 みな笑顔でマイクを握り、観客たちの呼び掛けに気前よく手を上げて応えている。
 ジミヘンに至っては騒ぎ立てる観客の頭をめがけ、手裏剣のようにピックを浴びせかけていた。

 ジミのアナーキーな芸風に思わず笑ってしまう。
 その時だ。1枚のピックがきらきらときらめきながら僕のもとに飛んできた。
 とっさに手のひらでキャッチする。顔を上げるとジミが僕に向かってばちりとウインクをした。(ように見えた)
 僕は願っても観る事の叶わなかったスーパースター達の夢の共演に熱狂し、夜通し酔いしれた。



 遠くから声がする。誰かが僕を呼んでいるようだ。
 目を開けると、知らない顔に囲まれていた。

「あれ? ジミヘンは?」
「何言ってるんだ。君は森の中で倒れてるところを見つかったんだよ」

「ここはどこですか?」
「救護テントだ」

 僕は半身を起こし、凝り固まっているこぶしを開いた。
 そこには1枚のピックが握られていた。


















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posted by layback at 17:12
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