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  「JP」 「糸電話」 「逆向き」 「締め切り」

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「一石二鳥」


「はぁー、今日もスッキリしたー」

「ほんと気持ちよかったね」

「仕事の後に一汗かいて、シャワーも浴びて」

「あとは一杯飲みにいきますか! でしょ?」

「あはは、それじゃサウナに来たオジサンじゃん」

「飲んじゃったらジムに来てる意味無いって?」

「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん、タダなんだからさ」

「それもそうよね」

「それにしてもフィットネスジムが無料で利用できるなんて」

「いい時代よね〜」

今日も某オフィスビルの地下では、

百台以上のエアロバイクやフィットネスマシンが、24時間体勢で稼動していた。

もちろんシャワーやジャグジーなどの施設も完備である。

しかもあろうことか、

その全てが無料で利用可能だと言うのだ。

これで繁盛しないわけがない。

オープン以来、会員数は爆発的に増え続けていた。

今も、若いOLからおじさんサラリーマンまで、

老若男女が黙々とペダルを漕ぎ、マシンに取り組んでいる。

そして、ガラス張りの休憩ロビーには、

その光景を見学するスーツ姿の男性が二人。

「キミ、これで本当にビルの光熱費がまかなえるのかね?」

「ええ、すでにNYのオフィス街ではほとんどのビルが、

人力発電で電力供給をまかなっているのです」

「なるほど、素晴らしいじゃないか」

「もちろん、フィットネス会員様にはこの事は秘密ですがね、ハハハハハ」











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「深すぎる井戸」



私は来る日も来る日も、



ひたすら井戸を掘り続けた、



新しい水脈を見つける為に。



穴が深くなるにつれ、



だんだん光も届かなくなり、



当然、私の判断力も鈍ってきた。



そして、老いた私の体力が、



そろそろ限界に近付こうかという



ある日の事だ、掘った穴の底から、



ポルトガル語が聞こえてくるではないか。



なんという事だ。



やはりこの日が来てしまったか。



ついにブラジル・・・・ゴホッ、失礼。



そう、



ブラジル人選手を招集しなければ、



このチームは立ち行かなくなったのだ。



サントス、ジュニーニョ、ウェズレイ・・・




















(「オシム語録」2007年の章より)













    
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