プイ〜〜〜〜〜ン。
んぁ? んが、なんだよっ!?
ベシッ。
平手で自分の頬を叩いて、ユウジは目を覚ました。
蚊か?
くぁ〜〜〜、よく寝たな。
何時だ? 今。
カーテンの隙間を押し広げるように差し込む陽の光は、
明らかに午前中のものではなかった。
暑ぃーな。
Tシャツも布団も汗で湿っている。
いったい何時間寝たのだろう。
身体のあちらこちらが痺れているし、
よく寝た割には、頭もどんよりとした感じだ。
んがっ。
喉が砂漠のように渇いていた。
重い身体をムリヤリ持ち上げ、台所へ向かう。
クソ。
なんだ、こいつらはよぉ。
小さなハエが数匹、台所を飛び回っている。
生ゴミか。
だが、覗きこんだ流しの三角コーナーは空っぽで、
ただ、小さな注射器が一つ、排水口に転がっていた。
なんだこれ?
全く記憶に無かったが、
寝起きの頭では考える気すら起きない。
とりあえず冷蔵庫の扉を開け、
口が開いたままのパックから牛乳をグラスに注ぎ、一気に飲み干した。
なんか食うもんは、と。
冷蔵庫の中にはめぼしいモノは無かった。
仕方なくダイニングテーブルに転がっているバナナを手に取る。
うへ、腐りかけてやがんな。コレ。
コイツのせいでハエが寄ってきたんじゃねーか。
ドカッとイスに腰掛け、
ギリ食えそうなそいつの皮をむく。
ねっとりと甘臭い香りが部屋中に広がった。
柔らかすぎるバナナを咀嚼しながら、
側にあったリモコンでテレビをつけてみると、
流れているのは、
女のお笑いコンビが司会をしている土曜午後の情報番組だった。
あれ? これ昨日も観たよな。
はは、まさか一週間も寝るわけないべ。
クソ、頭がいてぇ。
それに痺れている背中がどうもムズ痒い。
手の届きにくい場所なので、
イスの背もたれに擦りつけてみた。
ブニュ。
ブニュ?
イスの背に押し付けた箇所から、
生暖かい汁が背筋を伝ってケツの方へ流れてゆく。
ような気がした。
気のせいか?
痺れてるからか、いまいち感触が分からない。
なんだか、ハエ増えてねーか?
ったく何なんだよ。
部屋の中には甘臭い香りが充満している。
クソッ!
痒ぃーぞ!
ユウジは胸を反らし、目一杯、背中に手を伸ばした。
ブニュ。
プイ〜〜〜〜〜ン。
んぁ? んが、なんだよっ!?
ショートショート:目次へ
タグ:ショートショート