「何よ!」
「何だよ」
「言いたい事があるなら、はっきり言えばいいじゃない!」
「おい、ちょっと待ってくれよ。
僕は君と口論したくて、ここに来た訳じゃないんだよ。
ほら今まで僕たちは、すれ違いばかりだったじゃないか。
だから今後は仕事量も抑えて、君と過ごす時間を作るから、
もう一度やり直そう。二人が出会った頃の様に」
「ごめんなさい、私が意地を張って、
素直にあなたと一緒に居たいって言えなかったから……」
「もういいんだよ、お互いの気持ちを確認出来たんだからさ、
これ。君に似合うと思って買ってきたんだ」
「嘘、本当に?」
「ほら、指を出してごらん。
うん、やっぱりよく似合うよ」
「ありがとう……」
見つめ合い、寄り添う二人の影は、やがて一つになり、夕陽に包まれていった。
fin
「初めてのデートで不安だったけど、いい映画で良かったわ。
最後のシーン。キャメロン・ディアスの演技が素晴らしかったわよね」
「ん? あ、ああ。実は字幕ばかり目で追っちゃって、
演技を観るどころじゃ無かったんだよね。ハハハ」
「え? そうなの?」
「こ、今度から吹き替えで観ようか」
「……」
Fin
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