「おう、ヤス、ラーメンでも食ってくか」
「ハイ、アニキッ、ゴチになります!」
「この店は新しくできたみてーだな。
月光ラーメン、秘伝のスープ。ま、入ってみるか」
ガラガラッ。
「ラッシャイマセェッ!!」
元気がいいじゃねーか、客はいねーけど。
「カウンターでいいな、ヤス」
「ハイ、アニキ!」
「じゃ兄ちゃん、チャーシューメン二つと瓶ビールだ!」
「ヘイ! かしこまりました! チャーシュー2丁ッ!!」
「ハイヨォ!」
厨房からドスの効いた声が返ってきた。
ラーメンを待つ間、ビールを飲みながら東京での抗争の手打ちの話や、
お向かいのアヤちゃんの話で時間をつぶす。
「お待たせしましたぁ!」
「おう!」
デカめの黒いドンブリに盛られたラーメンが、
もうもうと湯気を上げて俺たちの目の前に現れた。
旨そうじゃねーか。
薄茶色でクリーミーなスープには背油が浮かび、
そのコクのある香りは俺たちの食欲をかきたてた。
チャーシューに囲まれた真中には、ドンと煮卵が浮かべられている。
なるほど、お月さんだな。
矢も盾も堪らず、レンゲで一口。スープをすする。
う、うめぇ。
初めて遭遇する味だった。
こりゃ、ただの豚骨じゃねーな。
隣を見ると、ヤスもスープを口にして恍惚と目を閉じている。
まつ毛が変に長くて気持ちわりぃ。
オレは割り箸を手に取り、麺をすすろうとして、固まった。
見つけちまったんだ。
「オイコラァァァアッ!!!!」
オレはイスを後に吹き飛ばし、立ち上がった。
ヤスは驚きのあまりスープを噴き出している。
目をパチクリし、鼻からは麺が2本飛び出していた。
「何だコレはぁぁぁッ!! 髪の毛が入ってるだろうがぁぁぁッ!!」
ホールの兄ちゃんは体を縮こまらせて立ち尽くし、顔面蒼白だ。
厨房の中から慌てて、もう一人が出てくる。
さっきのドスの効いた声の主だろう。
「ああ! これは失礼しました、すぐに取り替えさせて頂きますので!」
男は妙に素早い動きで、俺たちのドンブリを下げた。
そう、妙に素早くだ。
そして、ホールの兄ちゃんの横に並ぶと、
二人は白い帽子を手に取り、深々と頭を下げた。
「誠に申し訳ありませんでした! すぐに代わりをお持ちします!」
眩しい。
そう、二人の頭はまるで、お月さんの様にツルッツルだった。
ありゃ、明らかに剃り上げている。
ん?
待てよ?
店員は二人ともツルツル。
って事は……
さっきの髪の毛は?
オレはあんなに長くねぇ。
ましてやパンチだし。
そういや、あの毛。
妙に根元に向かって太くなって。
妙にツヤツヤしてて。
スープには油が浮いてて……
オエッ。
「おい、代わりはもういい! ヤ、ヤス、帰るぞ〜」
アニキ
@、
A、
B、
C Dショートショート:目次へ
posted by layback at 20:36
|
Comment(9)
|
TrackBack(0)
|
ショートショート作品