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「美白」


 庭にそびえ立つ大きなクスノキの葉を通して拡散した陽の光がわたしの膝をきらきらと撫でていた。
 風に揺れ、葉と葉が触れあって奏でる音が耳にやさしい。
 空に目をやると、夏の雲がセミの鳴き声を吸収して、もくもくとふくらみ続けていた。

 田舎の家ならではの広い庭で、子供たちは虫取り網を手に駆け回っている。
 わたしは年老いた父とともに子供たちの成長に目を細めながら縁側に座り込んでいた。

「お前達が子供の頃は、みな川で遊んでは真っ黒に日焼けしてたもんだがのぉ」

 父はそう言うと、水滴のついたグラスから麦茶をすすった。

「お父さん、この子達だって海や川で遊ぶ機会は少ないけど、ちゃんとプールでは泳いでるのよ」

「じゃあ、どうしてみな色が白い」 父は不思議そうに言う。

 わたしは言うかどうか迷ったが、けっきょく言った。

「このあいだね。用務員さんがプールに塩素を撒きすぎたのよ」












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posted by layback at 02:25
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「リサイクル」


 ついにGoogleタイムトラベルβ版が公開された。
 小学校教諭のわたしは早速生徒を引き連れ、未来のゴミ焼却施設へ社会見学にやってきた。

 お茶の水ハカセのような所長に案内され巨大な焼却炉を見せてもらう。
 分厚い耐熱ガラスの覗き窓から見える炎は、早く俺を外に出せと言わんばかりに暴れ狂っていた。
 ゴミを満載したEVトラックが次々と背後を通り、通路奥の搬入口へと吸い込まれてゆく。

「ものすごい量ですね」
「ええ、いくら科学技術が発達しても、ゴミが減ることはありませんね。むしろ増える一方です」

 子供たちは各々熱心にメモやスケッチを取っている。
 わたしは通り過ぎるトラックの荷台の中に光る異物を発見した。

「あれ? 所長、一般ゴミの中にペットボトルや電化製品が混じっていたようですが……」
「はい、実はゴミの分別は無駄が多くコストもかかるので廃止になったのです。今では全てのゴミを高熱で一度に燃やしてしまい、あとに残った希少金属などの有用な資源を取り出しているんですよ」

 ほぉーだとかへぇーだとか感嘆の声が子供たちの間からこぼれる。

「――ということは、建物の中で焼却炉はこの一基だけなんですか?」

「ええ、この窯でなんでも燃やせますからね」

 お茶の水ハカセは高らかな笑い声を上げたかと思うと、急に真顔になり、子供たちの方を指差した。

「おっと、君たち危ないよ」

 びくりと固まる子供たちの後ろを一風変わったEV(電気自動車)が静かに通りすぎてゆく。

 霊柩車だった。














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