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「ジェラシー」


「なぁユイ、ええやろ?」

「もう、マァくんアカンよ。下にお母さんいてはるねんから」

「さっきお茶持ってきたから、もう上がってけえへんよ」

「そんなん言うて聞こえたらどうするん?」

「声我慢したらええねん」

「アホ、そんなん声は自然に洩れるもんなの」

「ええからええから」

「ちょ、ちょっとマァくん、ああ」


  ☆  ☆  ☆


「ん……」

「え? ちょっとマァくんどないしたん?」

「……」

「あんた、顔真っ青やんか」

「……」

「え? 悪寒? ちょっと、大丈夫!?」

雅史の指はドアの方を指している。
唯は後ろを振り返った。

「あ!」

「オカン! 何覗いてんねん!」

パタッ

ドアは閉ざされ、部屋は静寂に包まれた。











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posted by layback at 08:36
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「キミだけを」


今日こそは彼女に告げよう。
年上で気の強い彼女にプロポーズを決意したものの、
言い出せないまま、数週間が過ぎていた。

「君だけを愛し続けるから、僕と一緒に……」

僕は口の中で一人呟きながら、夕食の準備をしていた。
今日は彼女が家に遊びに来る。
あまり料理の出来ない僕だったが、今日は一発、
おいしい手料理を食べさせて、いい気分になった彼女に
想いを告げようという算段だった。

難しい料理は到底作れそうにないので、
メニューはパスタとサラダだ。
彼女の好きな白ワインも買ってきたし、抜かりは無い。

BGMにアート・ペッパーのCDをかけながら、
サラダを盛り付けていると、玄関のチャイムが鳴った。

来た。

胸の鼓動が速まる。
落ち着け。
そう自分に言い聞かせる。
僕はゆっくりとドアを開けた。

「おつかれさま」

「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」

玄関でパンプスを脱ぎながら彼女は言った。

「ほんとに何も買ってこなくて良かったの?」

「大丈夫だよ、丁度今準備してた所なんだ。
その辺に座って、ゆっくりしててよ」

サラダをテーブルに運び、僕は手早くパスタを茹で上げた。
ベーコンを炒めたフライパンの上で玉子を絡め、皿に盛り付ける。

「出来たよー」

食卓に彼女を呼び、ワインで乾杯した。
早速パスタの味を見てもらう。

「うん! 美味しいよ」

「そう? 良かった」

僕はホッと胸を撫で下ろし、ワイングラスに手を伸ばした。
一口でグっと飲み干し、例の言葉を伝えようとする。

「僕は、き、キミだけを――」

「そう! 惜しいなぁ!」

「ええっ? な、何が?」

「黄身だけを使ってたら、もっと美味しくできたね!」

「……」

僕は思わず、言いかけた言葉を飲み込んだ。
その後、彼女のカルボナーラ講座が続いたのは言うまでもない。













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posted by layback at 19:19
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