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「飲酒運転」


昨日はいささか飲みすぎたようだ。

若干酒が残っているのかもしれない、

頭はガンガンするし、ハンドルを握る手にも力が入らなかった。

こんなんじゃダメだ。

しっかりしろ。

オレは自分に言い聞かせて、シートに深く腰を掛け直した。

目の前のガラス越しに、見慣れた光景が過ぎ去ってゆく。

大音量の音楽が鳴っているにも拘わらず、

眠気でまぶたが閉じそうになる。

必死に堪えようとするが、

何度か強弱を付けて襲い掛かってくる睡魔に、

ほんの一瞬意識が途切れた。

いかん!

慌ててまぶたを開けると、

目の前には……

うわっ、当たる!

身体が強張り、足に力が入る。

景色がスローモーションになり、

ガラス越しの画面には、7が三つ揃っていた。












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posted by layback at 14:59
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おまけ。


明くる日。

「あ。宮本さん、おはようございます」

「おーぼうや、おはようさん」

また、ぼうやって……。 

もう、なんど言ってもしょうがないな。

いつものツナギに野球帽を逆さに被った宮本さんは、

ガムをクチャクチャと噛みながら、にやにや笑いを浮かべている。

いやな予感がする。

これは、なにか言いたそうな顔だ。

「どうだった? 初夜はよ」

ほら、やっぱり……。

「もーほんと、そんなんじゃないですから」

「ちゃんと決めたか?」

「いい加減にしてくださいよ!」

ぼくはいつになく語気を強めて言う。

だが宮本さんは、まるでどこ吹く風だった。

「まぁ、練習にはいいかもしれんがなぁ。女は生身が一番だぞ。紹介してやろうか?」

「結構です。ぼくは彼女なんて要りませんから」

そもそも宮本さんに、そんな若い女の子の知り合いがいるはずがない。

「そうか残念だなぁ。おっとそろそろ引取りに行かなきゃだな」

裏口に向かいかけた宮本さんが振り返る。

と、ポケットからおもむろになにかを取り出した。

さっと僕の手を取り、それを握らせる。

「じゃ、行ってくるわ」

ぼくは遠ざかる宮本さんの背中を無言で見送った。

握らされた手を開く。

中には、くしゃくしゃの紙片。

デリヘルのチラシだった。















さらにおまけですw
posted by layback at 01:00
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