テーブル上の物体と猫とを交互に見る。
お前か。お前なのか。
猫はじっとわたしの目を見つめている。
トイレを覚えてからは粗相をすることなどなかったのに。よりによってテーブルの上とは。
それは、黒く細長く、一本気で(一本気?)、ツヤツヤとしていて、うん、なかなか立派じゃないか。
って、おい。感心しててどうする。
とは言え、まぁ体調は良さそうだ。
フローリングの上で猫は熱心にグルーミングをしている。
待て。それにしてもだ。なぜ下にティッシュが敷いてある? 猫が自分で敷くはずがない。
ううむ……。
母がふらりとダイニングに入ってきた。
「あら。これ食べないの?」
え?
「じゃ、いただきまーす」
食った!?
う、うう、言葉にならない。
「そ、それ」 わたしはやっとの思いで声を絞り出し、母の口元を指差した。
「かりんとうじゃない。美味しいわよ」
……美味しいわよじゃねぇよ。
ショートショート:目次へ
タグ:ショートショート