「お。編み物かい? アヤもやっと女の子らしくなってきたな」
「だって。あたしもう中学生だもん」
本人は怒ったようにそう言うものの。
ツンとあごを背けるしぐさは、まだまだ子供っぽいものだ。
そんな娘の姿を見ていると、つい、わたしの頬も緩み、軽口が出た。
「まさか、彼氏へのクリスマスプレゼントじゃないだろうな?」
アヤはそっぽを向いたまま返事をしない。
会話を聞いていた妻が、あきれた表情でリビングに入ってきた。
「あなたってば、何をいまさら……、もう家にも遊びに来てるのよ」
「な、なにぃ!?」
顔が一瞬で紅潮するのが自分でも分かる。
「許さん! 絶対に許さん!」
「バカね。あきらめなさい」
「駄目だ! いったい誰の許しを得て――」
「高校生の頃、親の目を盗んであたしの部屋に忍び込んでたのは誰よ」
「う……」
言葉に詰まる。
それは言わない約束だろう……
「喜んでくれるかなー」
アヤは編み上がった作品を、天井の照明にかざすようにして検めている。
「ワタルくんってばお腹が弱いから、腹巻きを編んでみたんだけど。どう?」
「うん、なかなか、初めてにしては上手じゃない」
許さん……
パパは許さん……
わたしのつぶやきをよそに母娘の会話は続く。
「あれ? アヤ、これは何?
なんだかこの部分だけ、靴下みたいに飛び出てるわよ。失敗しちゃった?」
「ああ、それはいいの。だって、こないだおばあちゃんが言ってたんだもん。
『いいかいアヤちゃん。おばあちゃんは反対だよ。
ああいうタイプの男は大抵、腹にイチモツを――
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